第67号「マーケティングの効果か」(2013年7月12日配信)

 短期出張用に使用していたキャリーバッグがとうとうイカレテしまいました。数週間前から転がすたびにキィキィ変な音が出始め、先週は車輪が一時的に回転しなくなり、無理やり引きずったらアスファルトの道路に傷が付いてしまうというような状況だったのです。

 車輪のゴムが磨り減って薄くなり剥がれそうになってはみ出し、金属製の支え部分とコスれてスムーズに回転しなくなっていました。進行の為の回転も方向転換の為の回転もだめになっていました。例によって修理しようとしたら見積もりに1週間、修理完了まで1ヶ月くらいかかるとの話しでした。

 毎週使う物なので新品を買うことにし、壊れたほうを調べてみました。そしたらビックリ仰天してしまったのです。ケースの内側を覆っていた布にはファスナーが付いていて、それを開いて覗き込んだら車輪取り付け部分が簡単に見えるのです。ねじで止めてあるだけでした。プラスドライバー1本で簡単に外せます。
 要するにゴムの車輪が手に入れば5分で取り付けが出来るのです。何の技術もいりません。それなのに「見積もりに1週間」だの「修理に何週間」だのと勿体をつけやがってふざけるな」と言いたくなります。どんなド素人でも修理できることが判明したので部品の取り寄せを頼んだら、修理は受け付けるが部品は扱っていないという答えでした。

キャリーバッグのメーカーもポリカーボなんとかという外装にして軽量化を図ったり努力はしていると思います。が車輪が転がるときのあのうるさい音は昔から改善されておらず、車輪が壊れたときの今回の販売店の対応も相変わらず従来どおりの迅速とはいえない不満の残るものでした。

 このブログでも何度か触れましたが、日本は高齢化社会と云われて久しいですが、世間はそれに対応できていないと思います。駅にもデパートにもベンチが殆どありません。お年寄りは物を大事に使います。使い慣れたものを修理して使うほうがストレスも小さく、資源の節約にもなります。新商品が少しばかり機能が向上しても燃費が良くなっても、新商品開発・試作のための資源消費、旧商品の廃棄コスト、新商品の操作に慣れるための消費者の時間の浪費等を考えたら、全体としては進歩でも改良でもないと思うのです。

 ところが今回は、キャリーバッグの修理をあきらめ、購入することにしてあちこちに店を回ってみたところ偶然にも「音の静かなキャリーバッグ」を見つけました。しかもこれは交換用車輪を部品として販売している(正確には販売予定)のです。長年抱いていた2大不満を一挙に解決する商品にやっとめぐり合えたのです。
  それにしても消費者の要望にこたえた商品にめぐり合えたのは本当に久しぶりです。随分時間がかかったな、というのが実感です。これがマーケティング専門家の働きによるものかどうかわかりませんが、久しぶりに嬉しい気持になりました。


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