第90号「個人情報って何?」(2019年1月18日配信)
正月休みと、11月決算会社の申告等でちょっとお休みをいただきました。
大分前から個人情報にうるさい世の中になった。インターネットを利用した買い物や支払い等に絡んで情報漏洩が起きるとマスコミが大いに取り上げる。何万人分の個人情報が漏洩しただの過去最大規模だのと報道される。そして社長以下数名が雁首揃えて整列し、普通のお辞儀よりもよりかなり長めのお辞儀をする。
漏洩の内容については報道によれば、住所・氏名・電話番号程度の事が多いようだ。購入履歴が漏洩したとの報道がされることも稀にある。しかし、ネットショッピングを申し込むときに開示している、年収や職業等も本当は漏洩していると考えるのが自然ではないだろうか。
しかし、こういった情報は大騒ぎするほどの情報だろうか。年収なんて通常は多少多めに答えてるはずだ。「職業」についても求められているのは、「会社員」や「自営業」程度のおおざっぱな範疇のみで、勤務先まで記載してはいなかった気がする。
この程度の情報に世間は大騒ぎするのに、我が国ではもっと重要な個人情報が野放しになっている。それは就職する時に提出を求められる「履歴書」あるいは「職務経歴書」だ。求職者は、本籍、学歴、既婚か独身か、いつからいつまでどこの会社でどんな役職で何をしていたか、場合によっては自宅までの地図等の開示を求められる。虚偽記載をして後で発覚すれば採用取り消しの可能性もある。何よりも不可解なのは、これだけの個人情報を提出しても不採用の場合返却されることは非常に少ない、という事だ。
世を上げて人手不足と言われているが、私の周囲では就職難の状況だ。特にまだ元気な中高齢者の就職難が甚だしい。多くの中高齢者が求職活動で大切な個人情報の開示を余儀なくされている。さして重要とも思えない情報漏洩には大騒ぎするマスコミが、求職活動での個人情報の駄々洩れには何の問題意識も持っていないようだ。
会社側としても、求職者の一定の個人情報は必要であろう。それは話を聞きながらメモを取ればよい。面接官のメモならば、万が一漏れることがあっても信ぴょう性は低い。それに対し、求職者本人が記載して署名・押印した履歴書や職務経歴書は信ぴょう性も高く、高度に保護されるべき個人情報である。面接時には見せるだけとすべきである。コピーは本人の許諾ある場合のみ許され、面接が終了したら返却しなければならない、といった法的保護を求めたい。
採用されるかどうかも分からない会社にこれほどの情報をさらけ出さざるを得ない我が国の悪習は変えなければならない。悪徳業者がその気になれば、求人を装って個人情報を集めることはたやすいことだ。誰も疑問を持たない、という事が信じられない。特に社会の木鐸たる責任を有するマスコミには頑張ってもらいたい。
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