第44号「小さく見えた豚カツ」(2013年2月2日配信)

先日、十名程度でちょっとした仕事をし、途中全員で一緒に昼食をとりました。昨今の不景気を反映しているのか、メニューの豚カツ定食が600円と格安でした。私とその他の数人も豚カツ定食を注文したのですが、実際料理が運ばれてきて驚きました。とても小さいのです。かじってみたら肉も薄くて2~3ミリしかありません。自ずと他の人の豚カツをよく見ましたが、いずれも私のより大きいのです。ウチの息子は幼少の頃自分の注文した料理が予想より小さくて大騒ぎしたことがあります。しかし私はいい年をした大人ですからわめくわけにもいかずあきらめて食べました。

食事客限定の100円コーヒーも注文してあったので、それを飲みながら興奮を鎮めているとアンケート用紙に気がつきました。アンケートに答えるのは好きなので、この件を記入して席の後ろにあった回収箱に投函しました。やがて時間も来たので仕事に戻らなければなりません。ゾロゾロと退席し、勘定はリーダーがまとめて払ったようです。

私は出入り口に近い席だったので真っ先に職場に戻り、誰よりも早く仕事に復帰しかけていました。そしたら遅れて戻ってきたリーダーが「オバちゃんが、『豚カツ小さくて済みませんでした』って俺に謝るんだよ。いったい何なの?」と言うではありませんか。私はシマッタと思いました。ほんの冗談のつもりで書いたアンケートがえらい事に………と思いましたが、知らん顔で皆と同じ反応を示しました。

リーダーも「確かに俺の豚カツやけに小さかったんだよな。けど、600円じゃこんなもんか、と思って食ったんだけど」などと話し、おおいに盛り上がりました。和気あいあいと午後の仕事に突入したので、特にどうと云うことはなかったのですが、この件で私は大いに学ぶところがありました。

リーダーの一言で、リーダーは自分の豚カツを小さいと認識していたことが明らかとなりました。ところが私は逆に、リーダーの豚カツは異常に大きくそれに比べて俺の豚カツはなんて小さいんだ、と感じていたのです。私は自分の感じ方が公正なものと自信をもっていましたが、人の感覚なんて、特に欲得が絡んでくるとこんなに当てにならないものか、改めて反省させられました。

自分としては、自分だけ損をしていると感じる程度でちょうど公平になるという意識は持っていて、そのように行動してきたつもりでしたが、相手の見方とかけ離れた認識をしていて、それに気付かないことがあったかも知れません。しかし今回の事件で、よりいっそう自重しなければいけないなと感じた次第です(ここまでは立派)。

でも、やっぱり私の豚カツは凄く小さくてリーダーの豚カツはすごく大きかったんですけど………。 それに、オバちゃんもオバちゃんだ。嫌味ったらしく客に詫びることないじゃないか、と思いました(やっぱり、私は凡人だ)。


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