第45号「もっと顧客を大切に」(2013年2月9日配信)

 家電メーカーが苦戦しているそうですが、私には思い当たることがあります。
先日、息子が「ウチのVHSのビデオ、見られなくなっちゃうよ」と言うので、話を聞いてみるとVHSビデオデッキの製造が中止され、量販店でも販売していないらしいのです。
私は、VHSで映像を保存している人は大勢いるはずだからまだまだ大丈夫だろうと考えていたので驚きました。ホソボソでも製造は続けていると思っていたのです。

 中古品をネットで買うしかないと覚悟を決めて探してみたら、かろうじて1社だけ製造していました。近くの量販店に確認したら在庫があり、新品を入手することが出来ました。しかし、ネットでは中古品がべらぼうな高値で出品されていて驚きました。いくらで出品しようが当人の勝手ですが、人の弱みに付け込んで新品より高い値段で売ろうとする心は好きにはなれません。

 それは兎も角、購入したVHS・DVD一体型のビデオデッキで早速、貴重なVHSからDVDへのダビングを始めておりますが、今度はミニDV用ビデオカメラが気になってきました。ウチのビデオカメラは壊れたまま修理していなかったのです。いつか修理しようと思っていたのですが日々の生活に追われてズルズルと今日まで来てしまいました。案の上、ビデオカメラは製造中止で量販店でもとっくに取り扱いを終了していました。

 それにしてもこうした機器を簡単に製造中止にし、部品も短期間しか保存しないメーカーの方針は何とかならないのでしょうか。ビデオカメラやビデオ再生機は単なる家電製品ではありません。ビデオカメラで撮影した映像やデッキで録画した映像は、本人や家族にとって貴重な記録であり、20年後~30年後でも見たいときがあるに違いありません。写真ならば紙媒体に写すことも出来ますが、動く映像はそうはいきません。再生機器がなくなったら貴重な記録が消えてしまうということをどう考えているのか、ということです。

 家電製品や電子機器等を購入すると必ず登録カードとかご利用者カードなどと云ったハガキが入っています。私はこうしたハガキは極力記入して出すようにしています。これまで何台もパソコンやビデオカメラやデジタルカメラや録画機器を買い、ハガキを返送しています。また、何回もパソコンやビデオカメラや録画機器の修理をしています。メーカーにその気さえあれば、消費者がいつどんな機器を購入したかのデータは容易に蓄積されるはずです。

しかしながら「お客様に○年○月にお買い求めいただいた□□□については、△年△月をもちまして製造中止となる予定です。つきましては撮り貯めた記録の保存について………」といった情報を貰ったことはただの一度もありません。いつの間にか知らないうちに製造中止になっていた、部品の保存期間を過ぎているから修理も出来ない、と云うのが現実なのです。

 メーカーは集めた登録カードや、修理の履歴データを何に使っているのでしょうか。そもそも利用しているのでしょうか。きちんと整理して活用すれば、顧客も助かるし、メーカーにとっても顧客をつなぎとめる強力な武器になると思うのですが、そういう発想はないのでしょうか。多くの機能をゴテゴテつけて売りっぱなし、と云う姿勢では客は固定客にはなりません。少しでも安い製品・商品を選ぶ浮気な客になるでしょう。そうなれば安い海外勢に勝てるはずがありません。日本メーカーの凋落には原因があると思います。


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