第32号「信じられないお年寄り」(2012年11月9日配信)

 先日、お世話になっている近隣へのお返しとして、近くの小学校とその近辺の道路の草むしりの奉仕活動が、市内のお年寄りを主体として催され、善良な1市民として私もこれに参加しました。

 当日の天気はうす曇で、暑くもなく寒くもなくまことに好都合な日和でした。案内状には集合場所として「小学校」としか記載がなく、広い小学校の何所に集まるのか不安でしたが行けば分かるだろうと出かけました。
 家から一番近い裏門が具合よく開いており、グランドに回ってみると遠くに大勢のお年寄りが固まっているのが見えました。「あれだな」と思って近くへ行くと数人のお年寄りが「あそこのトイレのカギがどうしたこうした」、「誰も使わないなら閉めようか」、「いつもは掛けるんだけど」等と一斉にワイワイ云うのです。回りからも「その人違うんじゃねぇの」「教頭先生は女だったわよ」とか勝手にしゃべるのですが状況が全く分かりません。人違いらしいので「私は学校の人間ではありません」と答えてその場から避難しました。

 近くにガードマンがいたので「カマやホウキを持った草むしりの集団を見ませんでしたか」と聞くと「向こうの建物の影の左の奥に居ましたよ」というのでやっと集合場所に到着できました。さっきのグループはゲートボールを終えてこれから帰ろうという集団でした。
 町内のリーダーらしいグループの一人が、参加予定者の名簿を持って出欠を確認していました。出欠を確認するならするで、集合時刻がきてから大きな声で「出席をとります」といって一気に終えてしまえばいいのに、人が来るたびにちょこちょこ傍へ駆け寄って「あなた誰さん?」という確認方法なのです。参加者はいろんな方角から来るし、勝手に動き回るので誰を確認したか分からなくなって「あなた聞きましたっけ?」などとやっている始末です。

 そのうち時間が来て草むしり要領の説明が始まりましたが、「この辺とこの裏側と建物の向こう側と国道の歩道と………」などというだけで図面があるわけでもなく、始めての参加者には殆ど分からない説明でした。何班が何所を担当するのかも言わないので各自適当に好きなところへ行ってむしり始めました。私は、顔見知りがいないので、優しそうな人の近くに行っておしゃべりしながら草をむしりました。
 1時間も経つと周りは随分きれいになりました。休憩に入って、ペットボトル入りお茶が出ました。自分でとりに行く人もいましたが、役員が配っているのが見えたので待っていました。ところが私のところには誰も来ないのです。どうも役員は自分の知り合いにだけ配ったようなのです。わずかお茶一本でも自分だけ貰えないのは悔しいので、役員らがタムロしている処(以下、タムロ場所といいます)に行って、段ボール箱をのぞいたら1本残っていたので勝手にそれを貰いました。

 休憩の後は片付け程度のことをやって、ほぼ終わったという感覚でタムロ場所に戻りました。そして周囲をよくみて驚きました。朝、集合したとき1坪くらいの広さに、名前は分かりませんが橙色のきれいな花がビッシリ咲いていたのですがそれがすべて根こそぎ引き抜かれていたのです。花壇らしいブロックの囲い等はありませんでしたが、場所や生え方からみて明らかに自生のものではありません。おそらく子供が植えたものでしょう。
 誰が抜いたか知りませんが、草むしりに来ているのに、きれいに咲きそろった花を抜くという発想が理解できませんでした。役員は知っているのかいないのか、下手に話して引っこ抜いた花を植え戻そう、ということになっても困るので黙っていました。むしった草はゴミ袋に入れて所定の場所に積んであるので見に行ってみると引き抜かれた花の束が捨ててありました。信じられない出来事でした。

 奉仕が終了して解散となり、私は正面玄関からではなく朝入ってきた裏門の方へ向かいました。家に近いからです。建物の脇をクネクネ通って裏門まで行くと門は無常にもピタリと閉まってガッチリ鍵が掛かっておりました。正面玄関まで引き返してそこから外へ出ても、我が家へ帰るにはまた裏門の方へ戻ることになるのでえらく遠回りになります。やむなく裏門をよじ登って脱出しました。最初から最後まで不愉快が続いた、極めて後味の悪い1日でした。折角無料奉仕したのに………チキショーメーッ!


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