第69回「誤解されてる消費税」(2012年1月21日)

 消費税増税の議論が盛んになってきました。財政危機を放置したままでは諸外国から信頼を得られないという増税容認派、この大不況期に増税するなど気違い沙汰だという反対派それぞれ説得力はあります。消費税以外に財源があるという説明にもなるほどと思うものがあります。しかし今回はこういった論点ではなく、多くの国民はそもそも消費税自体をよく理解しているのだろうか、という話です。

 あるTV番組での話です。そこでは消費税増税がテーマで、消費税以外の財源の有無や政府の無駄遣いや諸外国の所費税(付加価値税)の実例等について議論していました。そこに出席していた一人が、「イギリスの消費税は税率が高いけど、生活必需品たる食品や子供の養育に係るモノ例えば子供服には課税されません。マスメディア関連例えば新聞代にも課税されません。燃料代は低く抑えられて何%…」などと話し出しました。
 さらに彼は「イギリスでは会社が購入した場合、消費税は課税されません。いったん課税されますが還付されるので最終的に消費者が負担するんです。」「会社にとって、日本はかかりますよね。(イギリスの)付加価値税はかからないんです。だから(他の?)税金で持って行くって感じです」等の発言をしました。「日本では、会社でも個人でもモノを買うときは消費者として消費税を負担している」という理解であることが分かりました。

 我が国でも会社は事業遂行上必要な種々の財を購入します。その時会社は確かに消費税を払います。しかし、会社は財を購入し消費してオシマイということではありません。購入した財を利用して新たな財やサービスを生み出し、販売します。その時消費税を上乗せして売ります。つまり消費税を受け取るわけです。個々の取引ではなく月単位、年単位で見れば、通常は払った消費税以上の消費税を受け取ることになります。

 支払った消費税(A)よりも受け取った消費税(B)が多ければその差額を税務署に納付します。反対に、支払ったAよりも受け取ったBが少なければ、その差額の還付を請求します。このように日本の会社も払った消費税は控除でき、消費税を負担することはありません。多く受け取った分を「納付」はしますが「負担」はしないのです。日本の企業が他国の企業と比較して消費税上不利ということもありません。多く受け取った分を国庫に納めるだけのハナシです。

 以上のべた事は、煩雑さを回避するために相当に簡略化しており、厳密には正確な話ではありません。例えば、住宅の賃貸業のように非課税売上が多い(課税売上が課税売上+非課税売上に占める割合が95%未満)会社は、仕入時に払った消費税すべてを控除できるわけではありません。その一部あるいは全部を控除出来ないということになりますが、全体から見れば比重は小さいはずです。

 消費税が導入されて20年以上たちますが、先に話したTV討論者のように世間一般にはきちんと理解されていないように思います。消費者は財の代価に上乗せされた消費税をただ払うだけで、受け取ることはありません。申告する理由も必要もありませんから勉強する誘因もありません。これが消費者が消費税をよく理解していない最大の理由だと思います。


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