第68回「素晴らしい法定耐用年数」(2012年1月13日)

 固定資産の費用化は、使用可能期間を適正に見積もり、その見積もった期間にわたって規則的に価値の減少を認識(減価償却)していくのが本来のやり方ですが、その見積もりはなかなか容易ではありません。各社(各事業者)の自由に任せると、バラつきが出て課税の公平が保てなくなるということから、税務上は財務省から「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(以下、法定耐用年数)が示されており、各社ともこれに準拠しているのが現状です。

 この法定耐用年数に対しては「各社の使用状況が考慮されず、画一的に決められたもので実態に合っていない」とか「法定耐用年数に従っているからといって常に適正というわけではない」などと批判的な意見はよく耳にします。私もこの法定耐用年数については「適切とは言えないが無ければ困るもの」という程度の認識でした。 しかしながら私はこの度、法定耐用年数をおろそかにしてはいけないという経験をいたしました。

 皆さんは家電製品の使用可能期間を気にするほうでしょうか。故障して修理用の部品がもうないとか、買ったほうが修理するより安いという事態になって初めて買い替える人もいるだろうと思います。また、省エネの新製品が登場し、電気代を考慮すれば買い替えた方が得だとか、パソコンのように対応するソフトがなくなってきて買い替えざるを得ないとか、あまり古い製品は火を噴いたりして危険だ等、モノ自体は十分使えるのに買い替えるケースも多いのではないかと思います。
 いずれにしても、家電製品等については「いずれは買い替えるもの」といった意識が頭のどこかにあると思います。

 ところで我が家では、年末から年始にかけて突然漏電遮断機が落ちてしまうということが続きました。東電に連絡して担当者に調べてもらったら「まったく正常」に戻っているというので、少し様子を見ることにしたのですが、漏電の恐れもあったのでとても古い冷蔵庫が怪しいと思いこれを買い替えました(拙著「おもしろ会計 第16話 我が家はなぜか皆長寿」をお読みいただくと話は一層よく分かります)。
 2週間後にまた漏電遮断器が落ちて東電に連絡して調べてもらいましたが「全く正常」なので三度(みたび)様子を見ることにしました。同時に新築以来の「あったか便座」も危ないと思い、使用をやめることにしてコードを抜きました。しかし何の効果もなく今度は1週間後の真夜中にまた漏電遮断器が落ちました。漏電遮断器が落ちるたびにパソコンの無線ルーターやらバックアップ用のハードディスク等の再設定等で大変な手間がかかります。

 今度は、東電からもらった「でんきガイド」を参考に、配線用遮断器(各回路ごとの遮断器)を一旦全部切り、漏電遮断器を入れてから、配線用遮断器のツマミを1個ずつ入れていきました。この時漏電遮断器が落ちれば、そこの回路が怪しいということになります。ここで回路というのは、2階和室とか1階リビングとか玄関といった、小分けされた電気配線の系統の事です。
 ところが怪しいと判明した回路のツマミを切ったうえで他の回路のツマミを入れていくとまた漏電遮断器が落ちるということが続き、結局漏電が疑われる怪しい回路が4個も出て来てしまいました。ここまで判明したところで作業を中止しました。回路が4つもイカレテしまって、そこで漏電しているとは考えられません。漏電遮断器自体が故障しているに違いないと考えたからです。
 翌朝、漏電している回路を突き止める測定器(有料です)を設置してもらいました。そしてその日の夜また漏電遮断器が落ち、調べてもらったところ測定器の液晶画面の波形が直線であった事と、漏電ならば点滅するはずのセンサーも点滅しなかったことから漏電ではなかったことが明らかとなりました。故障していた漏電遮断器を良品と交換し、冷たくて飛び上がりそうになる便座から何日振りかで解放されました。

 当初担当者は、漏電遮断器はそんなに古くはないなどと、遮断機自体の故障の可能性は低いという認識だったようですが、私は例の法定耐用年数表で漏電遮断器を探してみました。「建物付属設備」の中の「電気設備」の中の「その他のもの」に該当すると思うのですが、その耐用年数は15年でした。わが家は平成8年築ですから十分に耐用年数を経過していたのです。

 私は家電製品については「もう寿命かな」とか「まだ使えるかな」などと考えますが、これに対して、配電盤に組み込まれているブレーカーや漏電遮断器を新製品に買い替えようと考えたことは一度もありませんでした。家電製品を動かす電気の配分や安全を受持っている大事な大事な配電盤に寿命があるということすら考えませんでした。反省するとともに、殆どのモノに洩れなく耐用年数を設定している法定耐用年数を改めて見直した次第です。


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