第67回「何十年ぶりかのお年玉)」(2012年1月6日)

 正月早々たいへん御目出たい事が勃発いたしました。
上尾に住んで15年になります。生活の本拠を移してから2年目ですが、さいたま市(特に大宮)に近くて便利だし、少し郊外へ出れば自然を満喫でき、この町が気に入っています。ただ若干不満なこともありました。今回はその一つにからむお話です。

 上尾市の医療費補助制度として、小中学生以下の治療費について本人負担3割分を市が負担するというのがあります。健康保険証と同時に「こども医療費受給資格証」を医療機関の窓口で提示すれば子供の医療費に関しては自己負担がゼロとなるのです。しかしながら去年の夏、息子が入院した病院では「うちは川越市なので上尾市の受給資格証は使用できません」と断られました。たまたま上尾市内の病院が救急患者の受け入れが出来ず、子供が上尾市外の病院へ搬送されたためにこの補助が受けられないというのは明らかに不公平だ、と思っておりました。

 その当時、市役所に陳情に行こうかとも考えましたが、公務員に限らず組織内の人間はミスを認めたがらないし、市側の反論も予想できたのでやめにしたのです。その反論とは「市内の病院に搬送されるか否かは全くの偶然による。特定の子を市外の病院に搬送する、といった恣意的な事はしていないのだから不公平というのはあたらない。」というようなことです。このように反論されたら一理あるので反論が難しいなと思ってしまったわけです。

 しかし年が明けて、コタツでお尻をあぶりながら「去年は悪い年だったな」などと考えているうちこの医療費のことをまた思い出しました。現実に医療費が全額無料になる子もいれば、ならない子もいるわけです。そしてその際、家計が貧しいとか裕福といった重要な要因は全く考慮されていないのです。

 予算に限りがあるなら、一部の市民に対して本人負担分を全額補助するのではなく、全市民に対して本人負担分の半額補助に変更すればいいのです。それでなくとも子供のいない人には恩恵がない等、平等にしたつもりでも全員に平等には出来ないものです。わざわざ進んで不平等を作り出すことはないだろうと思います。

 そういえば大震災よりも前の時点で、与党に政権担当能力がまるでないことが明らかとなり、支持率が急落し始めたころ、同党の女性議員が「私たちは良いことを沢山やっているのにマスコミが報道してくれない」と不満を漏らしていたのをTVで見たことがあります。その時この議員が「良いこと」と言っていたのは、見とおしも理念もない、単なる「バラマキ」のことでした。議員がカネをばらまくのは、それが国民の為にならないことは重々承知の上で、票の獲得のために止むを得ないと考えるからだろうと思っていました。本気で「バラまくことがよい政治」と信じているこの程度の人間を多数国政に送り込んだ我々もどうかしていたということです。

 この辺りまで考えを進めてきたところで「待てよ。上尾市がこんな不公平なバラマキをするだろうか。これじゃ市民から苦情が殺到するはずだ」と思えてきたのです。なにしろ上尾市民は価格にはたいへん敏感ですから。
 そこで改めて「こども医療費受給資格証」をみてみました。そしたら裏に細かい字で「上尾市との契約医療機関等以外の医療機関等で受診の場合は、領収書の添付……支給申請書を市に提出してください」という記載があったのです。すぐに必要資料をそろえて仕事始めそうそうに市役所窓口に行きました。窓口では親切に対応していただき、無事手続きを澄ますことができました。審査がとおれば3月ごろ入金されると思います、とのことで35年ぶり位のお年玉となりました。今年こそ飛躍の年にしたいと思います。


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