第64回「小遣い帳の効用」(2011年12月10日)

 確定申告の季節が近づいてきました。小規模な個人事業のなかには青色申告の控除は受けたいが、決算書やら確定申告書を作成するのが面倒という人がいます。小遣い帳程度のものでOKなら助かるんだけど、というのですが、今回は小遣い帳について少し考えて見たいと思います。

 最近はどうなのか知りませんが、私たちの世代は子供の頃、母親から「無駄遣いしないようにお小遣い帳をつけなさい」と言われたものです。特に冬休み前などは学校の先生まで「お年玉を無駄遣いしないようにお小遣い帳をつけるんですよ」などと言っていたような気がします。継続できたかどうかは別として、級友たちの多くが小遣い帳をつけたことがあるはずです。記録の内容は、お小遣いを貰った日付、買った日付、買った物の内容、金額くらいでしょう。小学生高学年くらいなら、週末あるいは月末ごとに〆て残高を計算して現金と照合する程度のことはしていたと思います。
 
 ちなみに私は、幼少の頃は無駄遣いをしなかったので小遣い帳をつける必要もなく、母から記帳を強制されることもありませんでした。そのかわり買うものを間接的に強制されていたのです。何を買っていたかというと、以前お話したように毎日10円貰って、パンの中では最も大きいコッペパンばかり買っていたのです。母は、私がちっぽけな食べ物を買うと「そんな高いものを買って!」と怒り、大きな食べ物を買うとニコニコするので、母を喜ばすためにコッペパンばかりを買っていたのです。だから小遣い帳をつける必要も意味も無かったのです。

 それはともかく、子供たちがつけるごく普通の小遣い帳は何かの役に立ったのでしょうか。母親が望むような無駄遣い防止に役立ったのでしょうか。私はあまり無駄遣い防止には繋がらなかったと思います。というのは、子供というものは、子供なりに親の心を読んで期待にこたえようとか、叱られないようにしようとかするものだからです。
こんな物を買ったら叱られるということが予測できれば、別の無難なものを買ったように記帳します。ですから後日、親が小遣い帳を点検しても好ましくない出費は見つからないというわけです。いずれバレるにしても初めは嘘で誤魔化します。派手な粉飾をしたオリンパスの役員様達と同じです。ほんとに大会社の役員様だというのに子供と同じというのが悲しいです。

 役員様は兎も角として、小遣い帳は全く無意味ともいえない面もありました。実は私は、学生時代から結婚するまでの20年ほどの期間、小遣い帳(家計簿)をつけていました。なぜ継続出来たのかというと、これが日記あるいは備忘録として結構利用できたからです。例えば、後日さかのぼって日付を確認したい時など大まかな記憶を頼りにその近辺の記録を見ればまず例外なく見つかるのです。
 就活で履歴書に賞罰を書きたい時など、正確な受賞日がわからなければ大体の日付は覚えていますから、家計簿でその近辺を捜せば、例えば授賞式に出席するための往復の電車賃の記載が見つかります。或いは帰宅後ワインを買って一人コッソリ祝ったのであればワインの購入日を探せばよいわけです。少し古くなった食品の購入日も確認できます。
 また、備忘録としての使い道もあります。二度目の資格試験の願書提出日が近づいて来れば、家計簿で1年前近辺を見るようにします。そうすれば願書用写真の撮影とか念のための予備のボールペン購入とか、やるべきことが思い出されます。このように小遣い帳程度の記録でも大いに役立つものです。ただし、きちんと脱漏無く記録されていることが前提です。
日記を書くのは面倒でも、買物の結果を書くだけなら一旦癖をつけさえすれば億劫ということはありません。もちろん学生時代も手帳は持っていましたが、結構付け忘れもあって寝る前に必ずつけていた家計簿のほうが役に立っていました。結婚してからはさすがに家計簿の記帳は家内に任せ、自分の小遣いだけは手帳に記帳していましたがいつしかそれも止めてしまいました。手帳をきちんとつけるようになったからです。

 小遣い帳の利点をお話ししたので、次は欠点なども見たいと思いますがそれは次回にしたいと思います。


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