第63回「大いに役に立つ話」(2011年12月3日)

 今年も早いものでもう師走となりました。このところ軽いお話が続いたので、今回は多くの会社に役に立つ話をしようと思います。 数年前の最高裁判決以降、サラ金利用者が払い過ぎた利息を取り戻すことが出来るようになりました。おかげで弁護士の先生が大いに潤ったとか、ウソかホントか分かりませんが御殿を建てたなどと云う話もよく聞かされたものです。しかしながら、このサラ金特需もいずれは終焉となるわけです。

 数年前にマクドナルドの店長さんたちが、僅かな管理職手当と引き換えに残業手当を踏み倒されていることに対して訴訟を提起し勝訴しました。従業員を「名ばかりの管理職」にして残業手当を支払わなかったため慌てて対策をたてた会社が多かったと聞いています。最近は不況で経営環境が厳しいこともあり、この「名ばかりの管理職手当」すら払わずサービス残業を強いていた会社もたくさんあります。

 とくに長時間勤務を強いている業界(コンビニ、家電量販店、外食産業、紳士服販売等)において未払い残業代の請求訴訟が多数提起され、会社が敗訴しています。判決を読んでみると従業員の半数が主任だとか、店長にはパート・アルバイトの採用権限もなく業務の裁量権もなく、また勤務時間もぎっちり管理されとても管理監督者などとよべるような待遇ではないケースばかりであることに驚きます。

 こうした傾向の背景にはマクドナルドの「名ばかり管理職訴訟」の判決の影響が大きいと思いますが、それよりも通常の裁判手続きは勿論、これより簡略な仮処分手続きよりもさらに短期間で決着がつく「労働審判制度」が始まったことの影響のほうが大きいと思います。

 在職しながら会社に対して訴訟を提起するのは相当強靱な神経がないとできません。普通は会社からのいやがらせや報復を避け、退職してから訴訟を提起するのが普通です。しかし、退職した者にとって、従来の半年も1年もかかる裁判は長すぎます。資金が続かず訴訟を断念した人も多かったに違いありません。それが平成18年から1~2カ月程度で和解までいける労働審判制度が導入されたことで、個人が容易に自分の利益を守るべく法的措置を取れるようになりました。
従業員が鬱積した不満を持ちながら働くのでは、本人にも会社にも決して良い結果をもたらさないでしょう。精神衛生上良くなく精神面の何らかの発症の恐れもあり、事故が発生する危険度も高まります。やはり払うべきものは払い、従業員が進んで仕事に精出せるような職場を確保してこそ、従業員の創意工夫や予想外の成果が期待できるものだと思います。
程度の差こそあれ、今の日本では多くの会社でサービス残業がなされているのではないかと思います。そして注意が必要なのは一旦争いになれば、どの会社もやっている、というのは言い訳にならないということです。また、サービス残業を従業員に強制する場合、一部に対してだけということはなく全員に対して強制していますから未払い額も相当な額に昇るのが普通です。さらに時効の2年分の残業代となると一概に言えませんが、結構な金額になりますから資金ショートを起こす危険が高いということです。

 ネットで「残業代請求」と検索すればゾロゾロと関連ホームページが出てきます。関係者は、サラ金過払い還付金の次は残業代請求にターゲットを決めているようです。今後増えるであろう未払い残業代請求訴訟をうけないために企業はどうすべきなのか、何をしたらいいのか、万が一訴訟を提起されたらどうすればいいのか等についても当事務所はお役にたてると思います。


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