第48回「カウンターは大活躍」(2011年8月12日)

 福島原発の大事故に関する政府のでたらめ情報も徐々に訂正されつつあります。空気中を漂う放射能物質も減少して、テレビや新聞で公表される関東地方の県庁所在地の放射線量も確かに平年並みです。
 しかしながら、被災地では子供への放射線の影響を心配して県外へ移転する等のニュースが目立ってきました。局地的に放射線量の高いところが徐々に公開され、あるいは各自で放射線測定器を購入して測定した結果による、苦渋の自衛行動のようです。

 息子が放射線量を気にして、ネットで調べたりして訴えるので、ウチでもとうとうロシア製の放射線測定器SOEKSを2万8千円(定価は5万円以上!)で購入しました。品物が到着するや待ちかねた息子は早速そこらじゅうの放射線量を測定し始めました。その結果は、室内は0.1~0.15マイクロシーベルト毎時(以下、mcSv/hと記載)前後、庭は0.2mcSv/h強、ベランダの隅に溜まったヘドロは0.66mcSv/hという値でした。家の近所では、幹線道路沿いが0.2mcSv/h強と高いことも分かりました。
 そこで疑問が湧いてきました。毎朝のTVや新聞で公表されている関東各県の県庁庁所在地の放射線量0.05mcSv/h前後というのはどこをどのように測った値なのでしょうか。埼玉県のさいたま市も0.05mcSv/hですが、上尾市とさいたま市は直線距離で15km程度しかありません。両市の間に山もありません。そんなに違うものでしょうか。
 自治体としても他よりも高い数値は発表したくはないでしょうから、測定場所(市庁舎の屋上あたり?)のコンクリートを水できれいに洗い流してから測定しているのではないだろうか、などと自治体の発表するデータに対し、ふつふつと不信の念が涌いてきました。

 ちょうどこの時、購読している雑誌に放射線測定器についての解説が掲載されていました。それによれば外部被ばくの恐れがあるのはガンマ線のみでガンマ線測定専用機があること、アルファ線、ベータ線、ガンマ線すべてを測定できるタイプは数値が高めに出てしまうこと、低線量(0.5mcSv/h以下)の場合は精度が落ち、高めの数値が表示される等の記載がありました。つまり市販されている測定器は、こことあそこではどちらが高いといった大まかな目安程度に使うべきで、測定値そのものにこだわらない方がよい、というような内容でした。

 一応この記事を信頼して、我が家での測定結果とさいたま市の公表数値との差異については納得しました。さらに、ひととおり家の中や近所の線量を測定してしまうと、放射線測定器というものは他に使い道がなく、何だか無駄な買い物をしたようで、ネットで中古品として売却しようかなど家族で話し合いました。

 ところがその後、家内の買い物に付き合った息子が帰るなり「トマトが高かったよ」というではありませんか。なんのことかと思ったら、息子は放射線測定器でスーパーの野菜売り場で商品をいろいろ測定したというのです。
 「八百屋のオヤジに殴られるぞ」と注意しましたが、大気中の放射線測定器で食品の放射線量も測定できるなら便利だなと思いました。しかし同時に、食品は食品専用機で測定しなければだめではないかとも考えておりました。

 その翌日、近所のスーパーで美味しそうなカツオの半身を売っていたのでつい買ってしまいました。測定魔の息子が、またまた例の放射線測定器で測定し「血合いの部分が高いみたい」と言い出しました。確かにそう思えたので、血合い部分をきれいに除去し、除去部分だけ集めて測定すると2.0mcSv/h強という数値でした。血合い部分を除いた身の部分は0.03mcSv/h程度でとても低い数値でした。

 こうなると話は別です。数値自体が正確かどうかは別として、何度測定しても一貫して明らかに異なる数値を示すのですから、この測定結果は無視できません。血合い部分とそれ以外の部分で、放射線量は明らかに違うことになります。放射線量の高い部分を捨ててそれ以外の部分だけ食べました。放射線測定器のおかげで危ない部分を食べずに済み、少々高かったが無駄な買い物ではなかったのかなぁと考え直しました。

 そしてとうとう最終的決着の日が到来したのです。大宮駅の隣の「さいたま新都心」駅まで運動靴を買いに行った息子が、そこでも放射線量を測定し、ウチの放射線測定器はテレビ等で公表されているとおり0.05mcSv/hを示したのです。すなわち、ウチの放射線測定器は信頼できる良品だったということが判明したのです。

 結局、自宅近辺の放射線量は若干高めのスポットだったことが分かりました。そして、人(特に専門家と称する人間)の話や週刊誌の記事の鵜呑みには注意すべきこと、事実を何よりも信頼すべきことを改めて認識した次第です。会社の評価、税務申告書の作成・チェック等にあたっても自分で事実を確認することの重要性を再確認する機会となりました。


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