第41回「夏バテにご注意を」(2011年6月24日)

ジメジメと暑い日が続いておりますが、梅雨が明ければあまり好きではない夏がやってきます。今年も猛暑になるのでしょうか。会計とは関係ありませんが夏バテしない秘訣をお教えいたしましょう。

私の学生時代は、高度成長真っ盛りで経済も成長しましたが、工場排水や生活排水による河川・湖沼の汚濁、工場の排煙や車の排気ガスによる大気汚染といったマイナス面が無視できない状況になってきた時代でした。

PCBや食品添加物等の化学物質、あるいは重金属等の健康に悪影響を及ぼす物質が次々と登場し、食べるものがなくなってしまうのではないか、というような時代になってきたのです。これら有害物質は、魚の内臓に蓄積されるとか、動物の脂肪に蓄積されるなどと言われていました。

高校生のころまでは豚肉の脂身も目刺しのハラワタも平気で食っていましたが、マスコミが取り上げる公害関連記事が決して誇張でも嘘でもないという確信が涌いてきたので、食品にはずいぶん注意するようになりました。食品添加物にも気をつけるようになりました。私は自分で料理する時は脂身の少ない肉を買い、さらに脂身の部分を切り取って捨てるようになりました。

同時に、自分でも公害を出さないように気を付け、実家の両親にも、乾麺やスパゲティのゆで汁が食器洗いに極めて有効であるとか、廃油は古新聞にしみこませて燃えるごみとして出すべきだとかコマゴマと忠告をしておりました。私は割とマメだったので寮でもよく自分で料理しましたが、その時もこうした注意をしていたのです。

そんなある日、寮生が大勢でカレーライスを作ったことがありました。参加者が10名程度だったような記憶なので、寮全体としての行事ではなく、何部屋かが共同で久しぶりに美味しいものを食べようということだったかも知れません。

私は、PCB等が蓄積した脂身を一緒に煮込まれては大変と思い、率先して料理に参加しました。豚肉を全部パックからだして脂身の白いところを包丁で切り取って捨てました。ジャガイモやニンジンも凹んでいるところに挟まった土をきれいに落として危険な要因を取り除きました。後は誰がどうやっても安全なカレーライスが出来るので、少し休むことにし他の寮生に任せました。

私はリラックスしてその辺をただプラプラしていました。そのうちカレーが温まってきて美味しそうな匂いが漂ってきました。その時です。食い倒れの大阪出身のかんぱら君がなにやらマヨネーズのチューブのようなものを取出し、カレーのナベにニュルニュルと白いものを大量に入れたのです。「おい、かんぱら、なんだそれ」とひったくって見たら「ラード」でした。初めて見る代物でした。脂身が嫌われていた時代にこんなものが売られていること自体信じられませんでした。

せっかく手間暇かけて脂身を取り除いたのにこの男は何ということをするんだ、と思い「ラードなんて体に良くないんだよ」と、鍋に入ったラードをすくい取ろうとしましたが、彼は「これ入れると旨いんだよ。夏バテだって大丈夫なんだよ」と、脂ぎった顔を真っ赤にして私の腕を掴んで妨害したのです。「ルーにもラードは入ってるからそれで十分だよ」もみ合っているうちにラードは溶けてしまいました。もはや取り除くことも出来ないので、結局ラードたっぷりカレーが完成し、皆で旨い旨いと言って食べました。私は正直食べたくありませんでしたが、お金を拠出していたので食べました。目の前に、あのにゅるにゅるラードがちらついて美味しくありませんでした。

寮では半年ごとに部屋替えの抽選をしていましたが、なぜか彼は南棟、私は北棟の部屋が当たり、それまであまり交流がありませんでした。この事件以来、注意して彼を観察するようになり判明したのですが、彼はしょっちゅうラードを使った料理を作っては食べていたようで、確かにどんなに暑くとも元気いっぱいで夏バテなど全くしそうにない男でした。私はダメですが、ラードは夏バテ防止に効果があるような気がします。


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