第40回「身近なところで経営判断」(2011年6月17日)

ナットク!会計第9回でホテルのベッドの下から、拙著「おもしろ会計」で国道の通行量から、それぞれ景気を判断するという画期的なノウハウを次々と惜しげもなく公開してまいりましたが、今回は偶然にも、意外なものから自営業や家計の経営状況あるいは財政状態の判断が出来るということを教えられました。

家内が、自分の作った日本酒入り卵焼きを良家のご子息が吐き出したことにショックを受け、しばらくしてから弁当作りをやめ、かわりにパンを焼いて息子に持たせてやるようにしたことは、以前お話しいたしました。あの事件以来、息子にはずっとパンを4枚(2枚1組で2組)持たせてやっていました。毎日同じでは飽きると思って、1組がジャムならもう1組はチョコレート、あるいは1組がイチゴジャムならもう1組はブルーベリージャムというように違う組み合わせにしていました。かわいい息子の為にかなり頑張ってきたつもりです。

ところが最近、「きょうのパン旨かったよ」とか「パン好評だよ」と言わないのです。朝、パンを手渡しても嬉しそうにしないのです。日本人だからパンにも飽きてきたのかなと思っていました。少し不安を感じ、確認のため「今日のパンには何が塗ってあった?」と聞くと「イチゴだったよ」「もう一つは何だった?」「えーと…何だっけな…」と半分しか答えられないことがあるのです。また、十勝アンコを塗って持たせて「今日のピーナツバターは旨かったか?」と聞くと「ウン、旨かったよ」と答えるといったことがちょくちょく発生したのです。

もう疑問の余地はありません。何を食ったか忘れることは確かにありますが、アンコとピーナツバターを間違えるはずはありません。2枚だけ食べて残り2枚を捨てている可能性が高まりました。世界には食糧がなくて餓死する子供が大勢いるというのに何ということ!断じて許せないことです。食べ物を粗末にするな、食えなかったら持ち帰れときつく言いました。それからは時々2枚を残してくるようになりました。元来息子は小食なので、量が多かったかも知れないと思いました。厚いまま4枚から2枚に減らすよりは、薄いのを4枚にして塗るものを2種類にした方がいいだろうと考え、当初は6枚切りくらいの厚さ(2cm位)4枚だったのを、8枚切りの厚さ以下(1cm位)4枚へ変えたのです。

それを見た心優しい級友達が「パンが薄くなってきたようだけど大丈夫か。佐藤会計はもうすぐ倒産しちゃうんじゃないか?」と本気で心配してくれたというのです。子供というものは本当によく見ています。うかつにパンの厚さも変えられません。いろいろ考えて3~4日の間、白砂糖をタップリまぶしたのやらチョコレート粉末が練り込まれて何やら乗っかっているのやら、とにかくすごく美味しそうな菓子パンを店で買ってきてそれを持たせてやりました。そしたら級友たちは「お店のパンが買えるようになったのか。一応危機を脱したようだな」と喜んでくれたそうです。

大きな会社の評価であれば、決算書類や確定申告書および関連資料を収集してあれこれ分析するのですが、自営業の場合は、あまりあてにならない決算書の分析よりも、店の雰囲気とか社長の性格、近所の評判等を重視すべきということは半ば常識ですし、私も承知していました。

しかし子供の弁当から経営危機を予測するという、超画期的な分析法もあるということを中学生から教わりました。彼らの素朴にしてかつ本質を突いたものの見方に感動しました。事業をする人は「たかが子供の弁当と侮(あなど)ることなかれ」です。サンドイッチの厚さから経営危機が露見するかも知れないのです。そして、あらためて人間いくつになっても謙虚にいろんな人から学べるものだなと深く反省した次第です。


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