第60号「修理して使いたい」(2013年5月24日配信)

私事で恐縮ですが、息子がそれなりに頑張ってようやく漢検2級を取得してから大分時が経ちました。その後、合格証書が届き驚いたのですが、準2級までのと比べて格段に立派なのです。大きさがB5判ではなくB4判と大型になり、デザインも豪勢で立派なものでした。一目見て「オッ、これはファイルじゃ駄目だ。額縁に入れなくちゃいけないな」とピンと感じさせるものでした。

他にも英検の合格証書や、小テストで全問記入した答案とか学業の成果がいろいろ増えてきました。小テストごときで何を騒いでいるのか、とお思いかも知れませんが、これまで学校の小テストは空家(空白)が多く、満室にするのが夢でした。ようやくそれがかなってきたのでこの際まとめて額縁に入れることにしました。

これまで飾っていた額縁から、富士山の写真や警視総監感謝状等を抜き出して入れ替えました。わざわざ断るほどのことではありませんが額縁を買うおカネがなかったということではなく、全てを飾るだけの場所はなかったということです。息子も「小テストなんか飾ることないよ」などと言いながらもまんざらでもない様子でした。これで息子もより一層やる気を出してくれるだろうと思い、めでたしめでたしと言いたかったのですが一つ心配事が出てきました。

入れ替え作業で改めて感じたのですが、額縁がやけに重いのです。原因はオモテ面にガラスの板が使用されていたからです。東日本大地震では我が家もかなり長時間揺れましたが、家具の転倒も物の落下も全くありませんでした。転倒防止等の措置をしていたからです。額縁も落下はしませんでしたが、特に何らの対策も施してなかったのでこれは僥倖(ぎょうこう)と云うべきでした。また大地震が来たら今度は無事では済まないかも知れません。

これに対して、業界団体から頂いた表彰状の額縁は、オモテ面がガラスではなく透明なセルロイドのような素材でとても軽いのです。もう決定!です。ガラスを外してセルロイドの板に交換することにしました。文房具屋を数件当たってみましたが、予想どおりでした。額縁一式なら売っているのですが、枠にはめ込む透明な板のみの販売はしていないのです。店員は「そんな買い方をするお客様はいません」などとほざく始末です。

付加価値をつけて高く売りたいのでしょうが、それは売る側の都合です。私の幼少時代には当たり前だった修理して使う、知恵を使って廃品の再利用を考えることがなくなりました。壊れたら丸々買い換えるのが当たり前になってしまいました。現代人は、先人と比べて情報を多く入手できるので一見進歩しているように見えますが、実態は逆ではないでしょうか。知恵を使う機会も余地も激減してこのままでは我々の頭脳はどんどん劣化していくようで怖いと思います。

常々このように考えていたので今回も意地でも素材を探して、ホームセンターで透明な厚さ0.5ミリの塩ビのシートを見つけ、額縁に合うように切断してガラス板と交換しました。これで万が一地震で額縁が落下しても、割れたガラスが飛散するという事態にはなりません。ということで一安心となり、満室の答案を見ながら「これが満点だったらなぁ」と欲が出てきた次第です。


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