第59号「棚卸し(その3)」(2013年5月17日配信)

棚卸しは会社にとって大変重要な業務の一つです。前回は、現物のカウント方法についてタグ方式とリスト方式とがあり、とっつき易いのはリスト方式であること、リスト方式は注意しないと大きな落とし穴があること等を話しました。勿論、タグ方式にも要注意点は沢山ありますが、詳細は次の機会に譲りたいと思います。今回は棚卸しの3回目ですが、対象について述べておしまいにしたいと思います。

「棚卸し」は、その言葉どおり商品とか材料とか梱包資材といった「棚卸資産」を数えて、それらの在庫数量を確定する業務です(棚卸しの対象だから「棚卸資産」と云うようになったのかも知れません)。が、実際には棚卸資産以外の資産もカウントするのが普通です。例えばロッカーとか冷蔵庫、パソコンや映像機器等の固定資産やリース資産もきちんと数えて所在や現況の確認をする、紛失していれば調査等しかるべき対応をすることが必要です。

まずリース資産についてですが、資産の存在を確認するだけでなく、契約状況の確認が重要です。リース期間中なのか、契約期間が満了して自動的に再リースになっているのか、買取になったのかの確認の良い機会となります。この点をいい加減にしていると、実態はリース期間が終了し買取って自社物件となったのに、経理部門では再リースと勘違いして延々とリース料を払い続ける、ということになりかねません。

次に、準固定資産の扱いがあります。準固定資産と云うのは正式な用語かどうかわかりませんが、実務では普通に使用される用語です。一定の小額の設備や備品については、固定資産に計上して毎年少しずつ減価償却をするのではなく、一度に損金として落としてもかまわない、という税務上の優遇措置があります。この扱いを適用して費用で落としてしまったため、帳簿には資産として載せられない、しかし現実に使用中の設備や備品を準固定資産とよんでいます。

棚卸しでは、この準固定資産の存在を確認し台帳に記載しておくことが実は大変重要です。と云うのは会社の帳簿に一切記録されていないということになると、その資産の管理責任者も不明と云うことになります。責任者がいなければ仮に誰かが社外に持ち出したとしても、そしてそのことに誰かが気付いたとしても「誰かがどこかへ移したんじゃないの?」で終わってしまいます。誰が調べるということもないまま月日が経ってウヤムヤになり、やがては社内の規律の乱れに繋がります。 

他にも外注先に預けてある原材料、営業倉庫に保管している商品、取引先に見本として渡している商品等をどう扱うか事前に決めておくべきです。実際に社員が出向いて実地に確認するのか、それとも代替的な方法で大丈夫なのかは各社の判断です。棚卸し当日、トラックに積んで得意先へ輸送中の商品があるのかないのか、あるならその商品内訳、帰社時の荷台の確認等も場合によっては必要です。

以上、棚卸対象に関する要注意点をお話いたしました。


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