第35回「ウチの金魚」(2011年5月14日)

息子が小学生の時の話です。足し算・引き算が延々と続きますが投げ出さないよう宜しくお願い致します。計算の好きな方は検算してみてください。

小学生当時、息子は都心部の学校に通っていましたが、都心は子供が少なく1学年1クラスでした。勿論クラス替えはありません。転校生等、若干の動きはあるもののずっと同じメンバーです。クラスに金魚鉢があり金魚を飼っていました。3年生の時、息子が、学校の金魚が1匹になってかわいそうだと言い出しました。

ウチでも金魚を5~6匹飼っていたので、そこから選んで持って行くように言うと、もっときれいなのを持って行きたいと言います。ウチで飼っていたのは、息子が1年生の時、日本テレビ前でやっていた1回300円の金魚すくいで掬ったもので、地味な色で正直あまりきれいではありませんでした。

女好きで調子のいい息子は、担任の美人先生の気に入られようと「ウチですごくきれいな金魚を飼っているから持ってきます」などと約束したことが推測されました。約束は守れと教育していた手前、仕方がないので新宿のデパートで@315円の美しいのを3匹買い、うち2匹を持たせてやりました。

クラスに、動物をいつくしむとか飼育するということとは無縁の超腕白君がいたのですが、その彼が「生き物係」を希望し、5年生のころから金魚の世話をすることになりました。彼が、気まぐれにエサをやりすぎたり塩素抜きをしない水道水を入れたりしたので、2匹が次々と死んで、うちで提供したデパート金魚1匹に減ってしまいました。

その腕白君が「生き物係」に在籍したままで何もせず、次第に世話好きの息子ともう一人が代わりに金魚の面倒を見るようになっていました。6年の時、夏休みに入るのを機に、金魚をわが家に連れて来ることになり、以後ずっとわが家で世話することになりました。理由は、1匹の為にせっかくの夏休みに毎日餌やりに学校に行くのは無駄であることと、家にも金魚が2匹いたので、2匹飼うも3匹飼うも同じだからです。ところがこの時息子はなぜか、同級生の花子ちゃんが自宅で飼っていた金魚を2匹引き受けてしまい、合計3匹持ち帰ってきました。家にいたのと合わせて5匹になりました。

ちなみにウチにいた金魚2匹の内訳は、息子が小学1年生の時、日テレ前の夜店で1回300円ですくった赤ちゃん金魚7匹のうちの最後の1匹と、デパートで@315円で購入したものです。日テレの金魚は6歳位、デパート金魚は、購入当時何歳だったのか不明なので3歳以上ということしか分かりません。金魚は年齢と共に尾ビレが長く伸びてヒラヒラしてきます。日テレ金魚の長く伸びた尾ビレはヒラヒラしてアゴ髭のように見えます。老人みたいなので老金魚を縮めて「老金(ろうきん)」とよんでいました。

「仲良くしろよ」と言いながら、学校から持ち帰った3匹をウチの水槽の2匹と一緒にしました。そしたら大変です。花子ちゃんに押し付けられた大きくて元気のいい金魚が、ウチの6歳の老金魚にぶつかったり押しのけたり乱暴狼藉を働くのです。老金は歳をくっているだけあって体は大きいのですが、元気がなく、ヨロヨロと逃げるばかり。口をぱくぱく開いて「助けてー」と言っているようで情けない限りでした。

新参者のくせに何と生意気な奴だと思い、唐揚げにでもしてやるかと言うと、息子が、金魚は胃袋ばかりで食べるところが少なくて美味しくない、と止めるので唐揚げはやめました。家内の希望もあり、やむなく金魚鉢をもう1個買って、息子が学校から持ってきた「花子ちゃんグループ」と、もともとウチで飼っていた「老金グループ」に分けて飼うことにしました。水槽用ポンプなども購入したので思いがけない出費となりました。

あとで判明したことですが、花子ちゃんはこの横暴金魚を持て余しており、誰かに押し付けようと虎視眈々と狙っていたのです。ちょうどいい具合にウチの息子が金魚を引き取るというので、すかさず「わたしの大事な金魚をあげる」と言葉たくみに言い寄ってきたらしいのです。女子がすべてこのようなものかどうか不明ですが、小学6年にしてこの策略を私も見習いたいと思います。

その後、息子が理科の宿題でメダカのオスとメスの違いを観察したいというので、また同じデパートで、1匹100円のメダカをオスメスとり混ぜてもらって4匹買いました。本当にゼニのかかる息子です。

元気のいい「花子ちゃんグループ」にメダカを入れたら危ないと思って、「老金グループ」の水槽に入れました。この後「老金グループ」では、デパートで購入した315円の金魚が死んでしまい、老金1匹とメダカという構成になりました。何日か経つうち、1匹のメダカが水槽に激突したのか背骨が曲がって死んでいました。さらに何日か経つと、どういうわけか分かりませんが、もう1匹が水質浄化剤として入れておいた木炭の下敷きになって横になっていました。

さらに何日か経つとメダカの上半身だけが漂っていました。今まではメダカ自身の原因による事故と考えられますが、今度ばかりは違います。もう1匹のメダカが同じメダカを半分食べてしまうとは考えられません。どう考えても弱くて安全パイと思っていた老金が犯人に間違いありません。

「こら、ジジィ、メダカを食っただろ?うまかったか?」と老金に言いましたが、当然ながら反応はありません。「何かありましたか?」というようなトボけた顔でマンボウのようにいつもどおりゆっくりゆっくり泳いでいます。残った1匹のメダカを守るため急きょ小さなツボを買って沈めました。デブ老金は入りこめない大きさで、メダカの避難用つぼというわけです。

とりあえずこれで安心なので、年がら年中水槽を眺めているわけにもいかないし、たまに見ては安心する程度でした。エサをやり忘れることもたびたびありました。ある日、水槽もだいぶ汚くなってきたので久しぶりに掃除をしようと思い、金魚をタライに移そうとしてメダカがいないことに気が付きました。掃除を兼ねて徹底的に捜索しましたがメダカの死体はありませんでした。

金魚は肉食で、メダカを食べてしまうことが分かりました。その他に「金魚のエサ」や水草もたべますから、正確には金魚は雑食だったのです。後でメダカの飼育法を調べたら「金魚等とは一緒にしないこと」と書いてありましたが、これだけでは何のことかわかりません。関係者の方々!「金魚はメダカを食べることがあります」と明確に書いてください。金魚を飼う人も、メダカと一緒に飼うときは金魚のエサは忘れずやりましょう。そうしないとメダカが食べられてしまいます。


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