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第82話 「指紋が消えた」(2014年1月12日)

 新年おめでとうございます。楽しいお正月をお過ごしになれたでしょうか。本年も宜しくお願いいたします。
平成も26年、年の初めだから縁起の良い話で幕開けといきたい。私の両手の指紋がかなり薄くなってしまった。完全に消えたわけではないが、溝が浅くなってすべすべしてきたのだ。初夢ではなく本当の話だ。
原因は息子にある。地元の人は絶対に避けるということで有名な三流病院で、続けざまにCTスキャンを撮られた息子は、身長の伸びが中3で止まってしまった。真っ当な病院で診察を受けなおし、リハビリやら整骨院に通ったりして幾分伸びてきたがそれでもまだまだだ。もう少し伸びて欲しい。背中の緊張を解くことが大事ということで、整骨院の治療のほかに家庭でも週4、5日マッサージをしてやっている。
  私自身が整骨医でマッサージしてもらい、そのときにやってもらった施術をまねて息子の背中を押したりなでたり揉んだりしている。1回30分ずつ半年ほど続いており、そのため私の掌がシャツとの摩擦で磨り減ってきたのだ。さらに加えて、加齢によって掌も含めて体中で脂っ気も湿り気も激減してきたため、私の両手の指の先端は異常にサラサラスベスベ、端的に言うとカサカサしている。
小学生の頃、悪事を企んでいる悪人が指紋を残さないように真っ赤に焼いた鉄棒を握って指紋を消し、それから犯行に及んだという漫画を見たことがある。何と強烈かつ野蛮かつ幼稚な漫画だったことか、今でも鮮明に記憶に残っている。
焼けた鉄棒など握ることもなく指紋が消え(かけ)たのだが、私は犯行を計画しているわけではない。私のような善人にとって、指紋がないということは何の役にも立ちはしない。逆に不便で仕方がない。モノを掴めないのだ。摩擦がほとんどないので、重いファイルなど持とうものなら滑って落っこちてしまうのだ。
  ファイルなどは両手で持てば何とかなる。困るのは財布から紙幣を出すときだ。滑ってしまってお札をすばやく出せないのである。後ろに人が並んでいたりすると気を使って焦るのでますますスムーズにいかなくなる。ATMに並んでキャッシュカードを使うときも同様で、カードをスムーズに取り出せない。
メガネを拭くときもメガネ付記がレンズにピタッと張り付いて動かず、メガネ拭きと指がこすれるだけだ。指がますますスベスベになる。読書のときもいちいち指をペロッと舐めないとページを繰ることが出来ない。学習や仕事のときはゴムの指サックが必需品になってしまった。
というわけでカバンにもポケットにも指サックを入れているが、これとは別に、指に潤いを与えるべくハンドクリームを生まれて初めて購入することにした。家内は手足や肌の潤いに関してはまったく心配がなく、クリームなど購入したことはない。家内からは参考意見がもらえないので手当たり次第によさそうなものを数種類買ってきた。これまでは化粧品をせっせと買っている人を「効きゃしないのに」と冷たい目で見ていたが、自分が買う羽目になってしまった。効果が出るといいのだが………。


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