第74号「野菜は正直」(2013年12月4日配信)

 毎年毎年「今年は暑くなりそうだ、省エネで大きな効果をあげてやろう」と思いながら、たいした行動もないままクーラー頼みの夏を過ごしてしまっていた。そしてあれだけ暑かった夏も終わり今年もやっぱり冬が来た。夏に植えたゴーヤの残骸を処理してしみじみ感じた。
 
 今年はこれまでの私ではなかった。ついに省エネ実行に踏み切ったのである。5月30日にゴーヤの苗を3株購入して大型プランターに2株、大型の丸い植木鉢に1株を植えてベランダに設置したのである。支柱やネット、土壌改良用に木酢液も購入し万全を期した。土は多少の不安があったがまだ十分に熟成していない自家製の腐葉土を使用した。しばらくたつと実に情けないヒョロヒョロした蔓が伸びてきた。葉っぱもパラパラ付いているという程度であった。

 隣の家でもゴーヤを栽培し、こちらは力強い葉っぱがわさわさ密生して伸び、まさに緑のカーテンと云った感じなのである。ウチのゴーヤが負けていることは誰の目にも明らかだった。 
 隣のご主人は結構器用とみえていろいろこまめにこなしているのである。ウチも隣も敷地が道路より少し高いので、道路から門扉まで階段が付いている。しかし階段では自転車の出し入れに不便なので、ウチでは段差を埋めるスロープを購入して階段の端っこに設置したのである。これに対してお隣は、階段の一部に敷地から道路まで斜めにコンクリートの滑り台のようなものを作って自転車をスムーズに出し入れできるようにしたのである。玄人はだしの仕事であった。

 私も学習机や椅子は勿論、2階のベランダ下に庇を取り付けて、1階和室の天窓を開けても雨が入り込まないようにするなど日曜大工に関してはかなりの自信をもっている。コンクリート充填剤で雨漏りを直したこともある。ドアホン用のカメラにかぶせた紫外線防止用カバーは今でも健在だ。園芸に関しても、落ち葉や剪定した小枝等で腐葉土を作り土壌に還元し、庭木の育成に努めてもいる。ゴーヤ栽培で負ける訳にはいかない。

 7月には、自家製の腐葉土がほぼ完成した状態となったのでそれをプランター及び植木鉢に補充した。が、努力の甲斐なく実ったゴーヤは3本だけ。ウチ1本は小さいうちに黄色く変色して腐って落ちてしまった。そこで残りの2本に関しては熟し過ぎないよう注意し、小ぶりのきゅうりくらいの大きさになった時点で収穫して食べてしまった。味はマァマァだったが、いろいろおカネをかけたのに2本ではかなり高いゴーヤだったことになる。

 花はこれ以上咲きそうもなく実がなる可能性もなかったが、まばらながらも葉っぱは緑で元気なのでしばらくおいておく事にした。どうせ残暑が厳しいだろうからまばらでも緑のカーテンらしきものがあったほうがよいと思ったのである。肥料を買ってきて土に混ぜ込んだ。その後忙しくて見るヒマもなかったが2週間ぶりにベランダにでてみたら、収穫時期終了と思っていたゴーヤが再び実をつけていたのである。それも10センチくらいのが3本に5センチくらいのが3本ということで、これが順調に大きくなれば元が取れる。

 そういえば少年時代の我が家の畑でも、ナスやきゅうりは1ヶ月くらいは収穫できていたことを思い出した。やはり肥料をキチンと蒔いたことが大きな原因だろうと思う。より良い腐葉土を補充したのも影響しているはずだ。野菜は手をかければそれに応えてくれるから嬉しい。猫も私を裏切らなかった。なぜ人間だけこちらの期待を裏切るようなことをするのだろう。人間とは高等どころか実は世の中で一番下等な生物なのかも知れない。

 早く片付けなければと思いつつ、12月に入ってかじかむ手でようやくチョリチョリに枯れたゴーヤのツルを取り払い、ネットやプラスチックの支柱等を片付け終えた。若い頃は何でもテキパキと片付けたものだが、最近は昔より物ぐさになったような気がする。


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