第57号「棚卸し」(2013年5月4日配信)

大型連休真っ盛りです。私も、息子が小さいころは休みの度にアチコチ連れて行きました。しかしもう電車だ水族館だと云っている歳ではありません。勉学に集中してもらわないと困ります。

というわけで、今年はどこに行くという当てもないので書類の整理を始めました。仕事の資料がいろんなファイルに綴りこまれて即座に取り出せない状況になってしまいました。一応ジャンル別にファイルを作っていますが、ファイルが資料でパンパンになりこれ以上入らない時、新しいファイルを用意するのが面倒で、別の無関係のファイルに突っ込んでいた報いがやってきたのです。

さすがに不便になってきたので使わない資料を廃棄し、余裕の出たファイルを統合して空きファイルを作り、そこに入りきらない資料を入れようとしたのです。しかしスムーズに進まず、部屋中が広げたファイルで一杯になり、いい加減な所で手を打って終了としました。やはりまず十分な数のファイルを用意し、各ファイルに名前をつけ、どんな資料を入れるか決めてから、そこへ資料を綴じこんでいくべきだったと反省しました。

何事によらず沢山の物や資料を処理するときは事前の準備が必要だな、と思いを新たにしたわけですが、これって実地棚卸しの鉄則だったのです。公開支援業務をしていた頃、何度も強調した事柄です。そこで今回から数回にわたって実地棚卸しに関する留意点について実務的なお話をしようと思います。最も多い3月決算会社の実地棚卸しはすでに終了していますが、9月の中間決算や来期3月の本決算に、あるいは3月以外を決算期とする会社の参考になればと思います。

まず、実地棚卸しの目的をしっかり認識することが必要だと思います。主な目的は、正確な期末在庫数の把握と在庫管理の改善です。正確な期末在庫数の把握ということは適正な売上原価の算定、つまりは適正な利益を算定するということです。この点を理解せず、お祭り気分でいい加減な棚卸しをやっていると重大なカウント漏れにもつながります。税務調査で調査官が4月上旬の売上伝票をパラパラとめくり「この4月アタマに売上げられた商品は、3月末の棚卸表のどこに載ってますか」と尋ねたとき返答できないということになりかねません。

4月上旬に仕入れた商品を4月上旬に販売するというのは通常考えられません。4月上旬の売上商品はすでに3月末には在庫として会社の倉庫に存在するのが普通です。棚卸しがきちんとできていれば4月販売商品は3月末の実地棚卸表に載っているはず、ということです。載っていなければ、4月ではなく前期3月にすでに売却スミだったという事で、修正を求められます(勿論4月の仕入れが立証できれば問題ありません)。

次に事前の準備の重要性について述べたいと思います。事前準備にもいろいろあり、周到な計画を作成しながら進めることになります。意外に忘れがちなのが取引先との調整です。単なる連絡ではなく、相手の了解を取ることが重要です。棚卸し当日はなるべく入庫・出庫はストップしたいものです。得意先に対して、棚卸し当日は発送できませんと云うことをどのように伝えるかよく考えるべきです。

在庫の事前の整理整頓も重要です。同一の商品がアチコチに点在していたのではカウントミスの原因となります。事前に一箇所にまとめておくことは基本です。また、すでに前日受注して棚卸当日出荷予定の商品は、取り分けて別保管とし、かつ棚卸担当者への周知徹底を図るといったことが最低限必要なこととなります。

次回はカウント方法について意外に多い誤りについてお話いたします。


前号 最新号 バックナンバー一覧 次号