第54号「やっと芽が出た柿の枝」(2013年4月12日配信)

このメルマガ第49話で、私の無知から柿の木の新芽を全部切り落としてを丸坊主にしてしまった話をしました。そして、このまま若葉が出て来ず従って光合成ができなければ、この木は栄養を取り込めなくなり枯れてしまうかも知れないと不安になりました。皆様に助けを求めましたところ、ある読者から「ほっておけば芽が出てくると思う」との情報を頂きました。

情報は嬉しかったのですが、初めは半信半疑でした。そのうち不安になりました。時々枝をチェックしたのですが一向に目が出る気配がなかったのです。近所の柿の木は小さな若葉が咲き出してきたのに、我が家の柿の木は待てど暮らせど太い枝数本だけのゴツゴツした木のままで、なんの変化もなかったのです。

ところが、です。4月に入ってまもなく、小さな緑がかった芽が一つ二つ太い枝の硬い皮を押し分けるようにチョッピリ顔を出しているのが見つかりました。ひょっとしたらドンドン芽が出てくるかも知れない、と思うと嬉しくて天にも昇るような気持ちになりました。何故なら私は柿が大好きで、美味しい柿が食べられるようにこの柿の木には大変な手間をかけていたからです。

時々、山茶花(さざんか)や金木犀(きんもくせい)の枝を剪定しますが、その切り落とした枝は捨てません。捨てずに枝と葉を分離して太い枝は捨て、細い枝は細かく裁断し、葉と一緒に腐らせて柿の木の根元に施肥するなどしていたのです。超美味なる柿が沢山実ったのはそのせいだと思います。手を掛ければ掛けただけ応えてくれる柿の木はとてもかわいいと感じます。幾ら手を掛けても殆ど応えてくれないうちの息子とは大違いです。

一昨年は福島原発事故の放射能の影響で、剪定した枝にも若干の放射能反応があったのでそのまま捨てざるを得ず、身を切られるようでした。それでも昨年の秋は、数は減ったものの相変わらず美味しい実がなりました。さすがに昨年は放射能の数値は下がったので沢山の剪定した葉が確保でき、これで肥料は心配要らないなと思ったものです。えらく派手な剪定をしてしまったのは、余りにも枝が繁茂してしまったのと、肥料は沢山あるから十分施肥してやれば枝もまた生えてくるだろうという気の緩みがあったのかも知れません。

メルマガ読者に教えて頂いた情報が信頼できるとわかり、それからは一層張り切って毎日枝を観察するようになりました。初めは枝の上部だけでしたが、そのうちアチコチから新芽が吹き出し、日に日に増えてきたのです。いまでは太い枝のそこらじゅうに黄緑色の花が咲いているような感じになりました。そのうち若葉の根元部分が伸びて普通の細い枝になっていくんだろうと思います。

木にも、生命力の強い木もあれば弱い木もあり、例えばビワの木などは切られて幹だけになっても切り口からすぐに葉が生えて来ます。山茶花は逆に弱くて木の幹だけになったらもう生えてきません。柿の木の生命力は強いのか弱いのか見当がつきませんでしたが、今回の件で強い木であることが分かりました。そういえば近所の人が「この柿の木は私が接木(ツギキ)したんですよ」などと話していましたから、やはり強い木だったんだなと改めて思った次第です。


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