第53号「そもそも基準が?」(2013年4月5日配信)

 こんなタイトルですが会計基準の話しではありません。あまりテレビは見ないので、たまたま多い時期にぶつかったのかも知れません。立て続けに原発事故の風評被害についての番組を視聴しました。安全基準を十分に満たしているのに野菜が売れない、観光客が戻らないといった地元の苦悩、それを応援しようとする人たちの姿、消費者の声等が放送されていました。

 こうした番組で感じたのは、消費者の行動を責められないのではないか、ということです。二つの理由から私自身もやはり原発被災地の野菜等は敬遠してしまいます。まず一つ目の理由ですが、地元では有名なS医科大病院で、中学生の息子が連続2回CTスキャンを撮られ、さらには放射性物質を注入しての血流検査も受けてしまい、これ以上の被曝は避けたいという強い気持があるからです。このことは昨年の7月と8月にメルマガで触れました。

 二つ目の理由は、番組でも触れていましたが安全基準を満たしていると云われても安心していいのか分からないということです。政府の定めた安全基準そのものが信用できるものかどうか、どういう経緯で誰が定めたのか、どの程度の覚悟を持って公表したのか分からないからです。医者やら教授だのが専門家と云う触れ込みで安全だとか危険だとか相反することを銘々が勝手に話していますが、「何に基づいた発言なのか、どんな実験をしたのか」と云うのが大多数の国民の気持だと思います。

 原発は絶対に大丈夫だから避難訓練は必要ない、というよりも避難訓練など許さないという発想がまかりとおっていた国です。こんな国がチェルノブイリ原発事故の影響を熱心に追跡調査したり研究していたとは思えません。少数の学者が調査研究しようとしていたかも知れませんが、そういう学者は冷や飯を食わされ、研究費予算もない状況だったに違いありません。

 国連が関連データや基準を公表しているようですが、これも何に基づいて定めたのかわかりません。核兵器をほぼ独占し、少なくとも原発を稼動させている常任理事国に支配されている国連に公平や公正を期待する人は少ないと思います。純粋に科学的な安全基準を出しているかも疑問です。今回の福島原発事故の影響は当然まだわかりません。何十年も追跡調査を続けて初めて少しずつ分かってくるはずです。要するに、原発事故の影響など分かっているはずがないと思われる政府が、基準を設定し公表したわけです。「基準を満たしています」と幾ら声高に言われても、多くの国民は「それ、根拠あるの?」と云う気持ちではないでしょうか。基準を満たしていると幾ら叫んでも、国民の不安は消えないのです。

 ロシアが提供してくれるかどうかわかりませんが、頭を下げて詳細な追跡データを入手し、きちんと分析することが必要でしょう。ロシアでなくともヨーロッパ諸国で同様のデータがあればそれでも良いと思いますが、いずれにしてもどのレベルなら大丈なのかは、科学的根拠基づいて示さない限り、国民大多数は信用しないでしょう。しばらくは風評被害も続くと思います。


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