第46号「いずれ70歳定年」(2013年2月17日配信)

 私は若いころから、年配者に気に入られることが多かったように思います。同年代の女性の前に行くと緊張してしまい、普段の自分が出せなくて結局うまくいきませんでした。年配の女性だと何故かリラックス出来て会話も弾むことが殆どでした。
月日が流れて自分が少しずつ年配になって来るにつれ、自分と同年代の女性ともリラックスして話せるようになって来ましたがやっぱり若い女性は苦手で、今も異性の友達は年配あるいは同年代ばかりです。

 そのなかに求職活動中の方がいらっしゃるのですが、時たま話を伺うと、面接で断られた会社がその後何度も求人募集をしている、と云うのです。朗らかで何の問題もないと思われる女性を採用しないその会社に興味がわき、私もネットでその会社の求人広告を見るようになりました。
 当初は「健康な女性 年齢不問」と云うことだったらしいのですが、つい最近も募集しており「20~30歳の女性」と年齢制限を加えてきたので驚きました。確かに今は買い手市場ですが、なぜそのように若い女性にこだわって選択肢を狭めるのでしょうか。若い人に就業の機会を与えなければならないとの使命感でもあるのでしょうか。それともみっちり仕込んで熟練者にしようとでも考えているのでしょうか。
 会社といっても本当に小さな企業です。若者を雇用することで社会貢献しようとしているとも考えにくいし、サンドイッチにハムを載せる程度の仕事ですから若者に限定する必要はないはずです。特に早朝6時からの勤務となれば若い女性に務まるのか、と思います。思うにここの男性店長は、極端な買い手市場だからウチでも若い女性を採用できるだろう、若い綺麗な女性なら売上げも伸びるだろうと男の側からの単純な発想をしたのだろうという気がします。

 いくら若い女性店員でも「ご注文は以上でよろしかったでしょうか(現在進行中なのになぜ過去形を使うの?)」「ご注文のA定食になります(いつAに化けるの?)」「コーヒーのほうをお持ちしました(コーヒー以外に何も頼んでないよ)」などというおかしな日本語を使われると幻滅します。私の場合は、商品が良くて安いこと、店員が明るくまともな受け答えが出来ることが店を選ぶ条件です。私は店員が若い女性だから買いに行くわけではありません。

 再雇用と云うことが言われていますが、定年で退職し再雇用されれば全く同じ仕事でも給料は半分程度に減額されます。しかし、今なら再雇用者は年金が支給されるので、それと合わせれば暮らしていけますから給料が安くとも不満は出ません。厳しい年金財政からいずれ70歳定年となるでしょうから、企業も今のうちそれに備えた体制作りをすべきだと思います。今なら企業は、自社の社風になじんだ熟練者を従来の半分の給料で雇えるということです。

 しかも退職者は毎年出ます。当分応募者がなくなる心配もありません。仮に自社の退職者でなくとも退職者はそれぞれの分野で数十年にわたり仕事をこなしてきているわけですから再雇用の価値は高いと思われます。いつ辞めるか分からない若者を雇うよりリスクも少ないし非常に有利なはずです。

 忘れてならないのは後継者の育成ですが、そのための若干名の若手の採用は必要でしょう。若者の未就業は確かに重要な問題ですが、政府は種々の職業訓練支援の施策をとっています。昔なら3度の飯を2度にしても金を貯め、まずは運転免許をとり、運送会社でさらにカネを貯め………というように自力で這い上がろうと努力したものです。政府の支援などありませんでした。現状の枠内で頑張れるはずだと思いますし、企業は企業で、もう少し合理的な行動がとれないものかと思います。


前号 最新号 バックナンバー一覧 次号