第4号「経理課員の評価」(2012年4月20日配信)

今回は社員の仕事ぶりの評価について考えてみたいと思います。製造部門であれば原価計算をきちんとやって各種の差異の分析をしたり、そこまでやるのが無理ならば各人別の仕損じ率を求めて個々の社員の作業水準を評価することができると思います。営業マンの成績は一目瞭然に明らかであり、短期的評価は難しくありません。

これに対して総務とか経理部門の社員の評価は難しいと思います。理由は幾つかあると思いますが、その最大のものは仕事の結果が数字で表せないことです。また管理部門の仕事がITの利用により、パソコンに向かってマウスを使ってすることが多くなったことも大きいと思います。要するにパソコンに向かってさえいれば、仮にネットを見ていようが私用のメールをしていようが仕事をしているように見えてしまうということです。

これは是非とも何とかしなければいけないのですが、そのためには上司が経理部門の仕事すべてを経験していることが必要になります。月次決算であれ、キャッシュフロー表の作成であれ、どういう手続きが必要なのか、その手続きごとにどの程度の時間が必要なのか、何処でミスしやすいのか等がすべてわかっていないと経理社員の精勤ぶりは十分には分かりません。

会計ソフトへの仕訳の入力は1時間で何本くらいが可能なのか、といった事まで知っていないと怠けているのか、それとも徐々にではあるが成長しているのか等は分かりません。勿論、片手にストップウォッチを持って経理課員の脇に貼りついて事細かに管理すべきなどとを言っているのではありません。大まかな平均的な作業効率を把握していないと、注意をするにも叱りつけるにもアドバイスを与えるにも迫力・説得力が出ないし、成長や長所の発見も出来ないということです。
経理を知らない部長が生まれるケースとして、昔の現場は体験しているがIT化された最近の現場は知らないとか、業種がまるで違う会社からスカウトされたため勝手がつかめないでいるとか、親会社から経理に不案内な部長を押し付けられた等いろいろ考えられます。

それでは経理業務全般を知り尽くしている部長なら問題なく部下の管理・教育ができるか、と云うと必ずしもそうでもないところがあります。自分で率先してどんどんやるのはいいが、部下に仕事を割り振ること、部下のつまずきに気付く事、指導すること等がまるで不得手な人もいます。

そういう場合、会社のトップはどうすべきでしょうか。あくまでも私見ですが、アドバイザーの力を借りることだと思います。手前味噌で恐縮ですが株式公開を支援した会計士はいろんな会社のいろんなタイプの経理マンと一緒に仕事をし、外部からの人材のスカウトは極力避ける方向で指導もしています。安上がりな記帳担当者として、あるいは節税請負人としてしか会計士を見ていないトップは大きな損をしていると思います。

経理課員の評価にかかわることで重要なものに業務ソフトのバージョンアップがあります。IT業界の人間に勧められるままに安易に業務ソフトを更新するのは考えものです。ソフトを操作する担当者本人が試供版なりを実際に使用した結果をよく聞き、慣れるまでの効率低下を補うだけのメリットを確認してからにすべきでしょう。そうしないと経営者が良かれと思って投資したのに仕事の効率はそれほど上がらず、場合によっては社員の評価を誤ってしまいます。


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