第39号「経営で大切なもの」(2012年12月28日配信)

今年もいよいよあと僅かとなりました。「企業の栄養剤」も今年最後となりましたが、どうも軽い話が多すぎたようで反省しております。最後ぐらいは軽くない話でいきたいと思います。

経営関連のハウツー本を読むと、経営の3要素とか3大経営資源として必ず登場するのが「ヒト、モノ、カネ」という言葉です。研修や試験で「経営資源について記せ」という問題を出したら、サラリーマンだろうが学生だろうが一人の例外も無く全員がこの3つについて述べるのではないでしょうか。さらに何らかの要素、例えば「情報」を加える人もいるかも知れませんが、この3つが基本的経営要素として広く業界に受け入れられていることは間違いありません。

私も当初は何の疑問も持たずに「ヒト、モノ、カネ」の3つを経営の基礎資源と考えておりました。しかし、いつの頃からか定かではありませんがこの考えにはシックリしないものを感じるようになりました。これだけで経営が出来るとは到底思えなかったからです。

何を不足と感じたかと言えば「経験」です。勿論、全く新しい未経験の分野に進出して成功している例もたくさんあります。私が必要だと考える「経験」は同一分野での単なる業務経験と云うことではなく、お客の心理を読むこと、従業員の心を推察すること、裏切られたり騙されたりといった経験、資金繰りでギリギリまで追い詰められた経験等、経営に当たって直面するであろう非常に重要な本源的な経験のことです。少なくともこのうちのいくつかを経験することは必要なのではないでしょうか。

さらに、経験と並ぶもうひとつの重要な経営資源ではないかと最近身にしみて感じるものがあります。それは「信用」です。世を挙げて安売り競争に走り利益を出せない状況下で、値引きもせず定価に近い価格で販売してしっかり利益をあげている会社があります。なにもせず定価で売ることは出来ません。この会社は、自社で販売した商品には最後まで責任を持っているのです。修理は勿論、些細な困りごとに対してもどうすることが最善の対処なのかを考えて対応し、お客様の信頼を勝ち得ていたのです。

よく挙げられる情報、特にコンサルタント等からでなければ入手出来ないような情報も確かに大事だと思いますが、それは結局のところ「カネ」に帰着します。おカネさえあればコンサルタントを依頼出来ます。モノもカネがあれば購入できるし、カネと経験と信用があればヒトの採用で大きな失敗はしないでしょう。種々の交流会にも参加できます。「ヒト、モノ、情報」は個別独立に挙げるほどのものではないと思います。

私は、経営にとって大切な3大要素は「カネ、経験、信用」ではないだろうかと思います。老舗であろうが有名企業であろうが信用を失ったら、それまでの蓄積は一気に崩壊してしまいます。また、信用は一朝一夕に築けるものではありません。築き上げるには時間がかかり、ちょっとしたことで壊れてしまうとても脆いものです。でもこれによって経営が支えられる、非常に心強い支えであるとつくづく思います。私も縁あって出会えた人々に信用されるよう誠心誠意努力していきたいと決意を新たにいたしました。

今年1年間のご愛顧ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。それでは皆様、よいお年をお迎え下さい。


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