第38号「総選挙後」(2012年12月22日配信)

 衆議院議員総選挙も終わり、各政党の獲得議席数は私の予想以上に痛快な結果に終わりました。私は今回の選挙は超重要な選挙であったと考えているので、前回および今回の2回に亘って選挙についてお話いたします。

 今回の選挙での唯一の見込み違いは、投票率が意外に伸びなかったということです。この結果には正直驚きました。原発をどうするのか、将来のエネルギー政策はどうすべきなのか、さらに外交防衛にしても景気対策にしても財政赤字にしても容易に解決できるようなものは何一つない、難問山積の国難の時によくこれだけ無関心でいられるものだと不思議です。

 あまりテレビは見ませんが、投票しなかった人が街頭インタビューに答えているのを聞くと、投票に行かなかった理由は、「自分の1票では何も変わらない」「誰がやっても同じ」というのが多いようです。こういう答えをする人は考え違いをしているのではなかろうか、いや、それよりなにより現状を認識できているのだろうかと思ってしまいます。

こういう人は、自分の1票でたちどころに世の中が変わるような事態を本気で希望し、夢見ているのでしょうか。「たった1票でお手軽に世の中が変わったら大変だよ!」とあえて申し上げたい。新しい会社法が施行されて、拒否権付き株式とか黄金株式といった魔法のような「種類株式」の発行が可能になりましたが、選挙の世界ではそんなVIP投票権はないのです。今後も無いと思います。

 1票行使するだけで世の中変えようというムシの良い考えは脇へ置いとくことにして、私たちの選挙権が以前よりもはるかに強力になったということは云えると思います。小選挙区制になって、必ずしも投票総数の過半数を抑えなくても政権がとれるということが、前回の民主党の大勝、今回の自民党の大勝で実証されたではありませんか。

 中選挙区制のころは政権交代など未来永劫不可能と思っておりました。政権交代が容易になるということが、小選挙区制が導入された理由の一つだったと思いますが、当時はとても信じられませんでした。しかしそれは本当だったのです。無党派層が少し投票すれば政権の行方はどうにでもなるのです。おごり高ぶった政権、無能な政権を次の選挙で引きずり下ろすことは以前ほど困難ではありません。私たちは無力ではないのです。

 また、「民主党にやらせてみたが結局何も変わらなかった」という意見も理解できません。私などは、変わらないどころではなく前よりずっと悪くなったと思います。こんな政権が続いたらどうなってしまうのか私は心底不安になったものです。だからこそ今回はイの一番に投票所へ行きました。そしておかげ様で一つ社会勉強が出来ました。

 話が横道にそれますが、投票の公正・公平を厳格に守るべくある方法が採用されていたことを初めて知りました。投票開始前に、投票箱の中に記載済みの投票用紙が入っていないことを選挙管理委員会は確認していたのです。投票に来た1番目と2番目の二人の選挙人が立会人としてそれを確認し、署名するのです。私はその名誉な役割をおおせつかって見事にその重責を果たしました。

 選挙の公正・公平で私が我慢ならないのは1票の格差です。以前は1:4とか1:5といった格差でさえ、なんら説得力ある根拠付けも無く最高裁がお墨付きを与え、私たちはただ驚き呆れることしか出来ませんでした。長期間、こういう状況下に置かれたせいで、それと比べれば今は大分良くなったというのが正直な気持ちです。とは言っても1:2以上の開きは是正できるはずだし是正すべきです。新政権には1票の格差是正も早急に解決して欲しいと思います。

 私が、このように今後の政治に幾分かでも希望を持っているのは、小選挙区制の下で政権交代が以前よりかなり容易になり、そしてそのことに政治家自身も気がついて「驕ってはいけない」という気持ちになってきていると信じているからです。


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