第22号「標的を絞らなくちゃ」(2012年8月31日配信)

インターネットは確かに強力な武器になり得ると思います。しかし特に高い知名度があるわけでもない一般庶民が、ネットで何か情報を公開したとしても必ずしも多くの人の目に触れるとは云えないでしょう。知り合いに電話して「見てね」と頼めば観てもらえるというところではないかと思います。

半年ほど前ですがロフトの整理をしていたら、十五年ほど前に購入してほんの数ヶ月使用しただけで、その後全く使用していないワープロ専用機が出てきました。このまま死蔵させてもかわいそうだ、売却しようと云う気になりました。以前、ワープロ専用機が製造中止になり、買い替えが出来ず困っている、という愛用者の嘆きを座しか何かで読んでいたからです。

ネットオークションに出品してみました。適正な値段は分からなかったのですがいい加減に1万3千円に設定しました。すぐ買い手が見つかるだろうと極めて楽観的に構えていました。ところが待てど暮らせどアタリがなく、5週ほど延長しましたが結局駄目でした。

仕方がないので、キリのいい1万円に値下げして再度出品しましたがやはり何の反応もなく数週間が過ぎ去りました。認識の甘さを指摘されたような気がして思い切って5千円に値下げして再々出品したのですがやはり音沙汰なしという無残な結果に終わりました。

3回目のオークション出品中は、ワープロ専用機買取専門店に尋ねたりして3千円なら買い取ってもらえそうと判明したのです。業者が3千円で買い取るということは、市場での小売価格は1万円くらいだろう、とすると5千円の出品価格は高くないはずだ、と自身を励ましていたのですが、結局は売れなかったのです。

その後、意気消沈してしばらくワープロ専用機はそのまま放置していました。そしてある暇な昼時に、無料配布の地域情報誌を読んでいて「そうだ、この『譲りますコーナー』に掲載しよう」とひらめいたのです。昔、子猫をもらってもらうときもうまくいったし、きっとうまくいくという予感がしてきました。

早速電話すると、希望が多くて今すぐに掲載というわけにいきませんが来月掲載でいいですか、というのでもちろんお願いし、そして掲載内容を伝えて待っておりました。ようやく掲載の順番が来て、掲載されたその日のうちから電話が入り、あっという間に決まってしまいました。掲載日から4日の間に全部で10件の申し込みをいただき、お断りするのが心苦しくなってしまいました。

出品したのがワープロ専用機なので、ネットオークションには向かなかったのは確かだと思います。これが欲しい人は多分パソコンを使用しない人でしょうから、初めから地域情報誌で行くべきでした。販売戦略を立てるときターゲットを何所に絞るかということが重要だなどと人様に話をするくせに、恥ずかしいヘマをしたものだと思いました。

同時にまた、世界中の人が見ているネットオークションを利用すれば何とかなるはずだ、ネットオークションこそ世の中をがらりと変える強力な武器だといった考えになっていたように思います。パソコン万能などとは思っていないつもりでしたが、知らず知らずのうちにアナログの地域情報誌を軽んずる姿勢になっていた、と反省させられました。


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