第16号「ゴキブリの教訓」(2012年7月22日配信)

いつ誰がどういう根拠で言い出したのか分かりませんが、「ゴキブリは地球上で最後まで生き延びる生き物だ」ということを結構多くの人が信じているようです。

少し古い話ですが、今年の母の日をウッカリ忘れて何もしなかったので、埋め合わせとして父の日に家事一切を私が引き受けることになりました。その父の日に私は早起きして朝食を作ろうと台所に降りて行きました。台所のシンクに乾いた洗い桶があり、中にゴキブリがじっとしていました。私の気配を察したか急にガサガサと動き出したので「逃がすものか」と、まな板として使っていたすし飯桶用の大きなフタをのせて閉じ込めました。

その後の処置について良いアイデアが湧かず、とりあえずゴキブリを閉じ込めたまま放置して米を三合計って研ぎました。洗い桶がふさがっているので大ナベにザルをのせ米ととぎ汁をドバッとあけました。私は急にこの大なべのとぎ汁をゴキブリにぶっかけてやろうという気になりました。

逃げださないよう注意しながら蓋をそっとずらしてみるとゴキブリがふたたび動き出しました。よじ登ろうとするので洗い桶を叩いて内側に落下させ、仰向けになったところにすばやくとぎ汁をぶっかけました。すると何と不思議、ゴキブリの動きがピタリと止まりそのまま動かなくなってしまったのです。

初めは、とぎ汁には栄養があるので飲んでいるのかと思いましたが口元が動いていません。また蓋をして放置し、コーヒーを入れたりして一段落したところでもう一度見てみるとどうも様子が変です。竹の串でつついてみたのですが全く動きません。死んでいたのです。

危険な薬剤など全く使っていないのに、あのしぶといゴキブリがとても簡単に死んでしまったのです。ゴキブリをやっつけるには「薬剤かネバネバの捕獲器を使わなければいけない」と勝手に思い込んでいたことに気付きました。噴霧器も捕獲器も必要ありません。ゴキブリを見かけたらお椀でもかぶせて逃げないようにし、お椀の下に下敷きでも差し込んで、おわんと下敷きで閉じ込めればオシマイです。シンクに放り出し、何かの容器に貯めといたとぎ汁をぶっかければいいのです。私は時には常識を疑ってみることが大事であることに気がつきました。

周りを見ると、不況でモノが売れなくて大変だという声ばかりです。しかし閉店の大バーゲンセールには多くの人が押し寄せますから安ければ売れるのです。それなのになぜ安く売らないのかといえば、いろんな機能を詰め込んで複雑にしているから安く作れないし売れないのだと思います。ボタンが50個もあるようなリモコンなんていらないのです。多くの人にとって、リモコンのボタンなんか10~20個もあれば十分ではないでしょうか。

必要不可欠でない機能はすべて削ってシンプルにして、値段を大幅に下げて欲しいです。消費者が払える水準まで値段を下げれば、日本商品は国内でも国外でも十分売れるのではないでしょうか。

誰もチェックせず公務員任せにしたらどんどん行政組織が肥大化することはよく知られていますが、技術者任せにするから不必要な機能のオンパレードになるのだと思います。これを抑えるのが社長以下の経営陣の役目のはずです。結局は社長以下の経営陣が、消費者の要求が分かっていないことが業績不振の一因だと思います。

改めてリモコンをみてみましたが、CD・MD付ラジカセのリモコン、テレビのリモコン、DVDレコーダーのリモコン、エアコンも扇風機もさらにはパソコンにもリモコンがありますが、どれもこれもボタンで埋め尽くされています。使用するボタンはその半分もありません。見ていたら腹が立ってきました。これまでささやかながら日本を応援するつもりで国産品を買っていましたがいい加減愛想がつきました。今度買い換えるときは、リモコンがシンプルで本体の価額の安いモノにする予定です。


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