第14号「お婆ぁちゃんの知恵」(2012年7月6日配信)

このところ堅い話が続いたので今回はかなりやわらかい話です。今年の6月21日の台風4号の大雨で1階の和室の天井から雨漏りがしてきました。2階ではなく1階というところが驚きですが、この和室の雨漏りは実はこれが初めてではないのです。昨年の9月21日の台風の大雨のときも出張から帰ったら雨漏りしたと家内と息子が大騒ぎしていました。ビニールシートをガムテープで天井に貼り付けて雨だれが落ちないようにしていました。

今回もまた、息子が天井にビニールシートを貼り付けようとするので止めさせました。これだから昔を知らない子供は困ります。家具を退(の)けて、真下にバケツを置いとけばそれでいいのです。応急処置としてはこれで十分です。何ということもありません。ただ梅雨でジメジメしているので、天井裏にカビでも生えたら大変ですから天井に直径1cmくらいの穴を開けて雨水が残らずバケツに落ちるようにしました。

問題は、原因の解明です。去年の雨漏りではあちこち調べましたが分かりませんでした。和室の真上に当たるベランダのトタン板カバーの継ぎ目が何となく怪しかったので、防水テープを張りました。その後何度か雨は降りましたが、雨漏りはなかったので補修完了と思っていたのですが、今回の雨漏りで原因は別にあることが判明しました。

和室の壁の上部にシミができているので、その近辺の外壁から雨水が染み込んでいることが考えられます。屋根は確かにカビだかコケだかが生えてきて要修理の状態ですが、2階が大丈夫なのですから屋根が原因ではないとの確信がありました。家の外壁に電話や電気の引込ケーブルが貫通している箇所があり、高さもちょうど1階の天井裏あたりなので、これが怪しいと思われました。

脚立(きゃたつ)を持ってきてその天板に乗ってみましたが、ケーブルの貫通口が高すぎる上、ケーブルが太いのでその上部が見えません。いろいろ考えた結果、縁台を持ってきてその上に脚立を乗せ、その天板に乗りましたからかなり危ない行為でした。生垣の山茶花(さざんか)が異常に繁茂して家の外壁に届かんばかりになっていて、頭や背中や腕が山茶花の枝葉にひっかかって参りました。

それでも大分ケーブルに近づいたので、多少斜め下からですが貫通部の上部が見え、穴というか隙間が開いていることが分かりました。うまい具合に外壁と同じ灰色の、チューブ入りコンクリート充填剤(じゅうてんざい)があったので、それを隙間にブニューっと注入しました。充填剤が隙間に吸い込まれていく感触があったので、首尾よく補修できたと思います。ただし元々、多少の雨では水漏れは起きないので、台風による大雨が来ないと修理の効果は分かりません。

話がだいぶ長くなりましたが、これからようやく本題です。山茶花の枝葉に引っかかり、こすられたせいだと思いますが、翌日になって右腕と首が痒くなってきました。山茶花の毛虫に刺されたときの赤い腫れが10箇所ぐらい現れていました。山茶花の毛虫の毒は強烈で、ひどいときは腕や腹全面がぼこぼこに腫れるのですが、今回は軽微でした。

雨漏りの修理を終えて満足し、酒を飲んだことを思い出しました。山茶花の毛虫に刺されたら飲酒は厳禁なのです。本来なら問題にならない軽微な虫刺されなのに、飲酒したため症状が出たのだと思います。軽微とはいっても痒くてたまりません。しかし、掻くと一層ひどくなるのを何度も体験していたので我慢しました。

突然妙案がひらめきました。ペットの抜け毛やカーペットのホコリを吸着させる粘着シート「俗称コロコロ」を使うということです。山やキャンプで毛虫に刺されたときは、ガムテープに毛虫の毒毛を吸着させて取り除くのがよいという記事を雑誌か新聞で昔読んだことがあるのです。早速やってみました。粘着力が非常に強く、腕の皮が少し痛いぐらいでしたが何度もコロコロを転がしました。

時間が経過してしまったのでどうかなと思いましたが、嬉しいことに記事どおりの結果となりました。痒みが大いに弱まったのです。痒みが気にならなくなり、おかげで熟睡でき、赤い腫れが翌朝には黒っぽい小さな斑点に変わっていてほぼ完治状態になったのです。腕に刺さっていた毛虫の毒毛があの超強力なコロコロできれいに除去されたのだと思います。昨夜飲酒したのは失敗でしたが、そのまま眠ってしまって風呂に入らなかったのは幸運でした。風呂でこすると毛虫の毒毛が切れて体内に残ってしまうというのは医者から注意されたことでした。

経験のある人は分かるでしょうが、山茶花の毛虫に刺されるとキンカンなど塗っても全く効き目がありません。スースーして痒みが弱まりますが一時的で、腫れもひかず何の効果もありません。翌日ではなく当日にコロコロをかけていればもっと効果があったと思います。今回の教訓は、新聞に掲載されている応急措置関連記事、医学関連記事は結構信頼できるということです。現代版「お婆ぁちゃんの知恵」と言えるのではないでしょうか。

このほかに自分で体験して効果が実証できたのは、火傷のときはまず水道水で冷やすこと、水虫に酢を塗っても直ったように見えるだけで完治は難しいこと、風邪を引くと熱が出るのは風邪のウィルスを熱で殺すための防衛機能だからむやみに解熱剤を服用するのはよくないこと等です。


前号 最新号 バックナンバー一覧 次号