第13号「IFRSはどうなる?(その3)」(2012年6月27日配信)

欧米人は常に自国に都合の良いように規則を作り、諸国に押し付けて遵守させ、自国に都合が悪くなるとアッサリと変更します。金融危機でのBIS規制、時価会計の見直し等の変節振りは見事なものでした。このとき私は、彼らが自国の利益を図るためには平気で横車を押す民族であることを改めて認識した次第です。ソフト面での世界標準を支配することが重要であることを多くの国が認識し、そのために熾烈な競争をしています。IFRSが生れた真の背景を知りたくてなりません。

最近の金融担当大臣の慎重発言により、一時の馬鹿騒ぎが下火となりました。書店に行ってもIFRSの解説本はほとんど見かけません。IFRSの普及で一番得をするのは誰なのか、どこの国なのかをしっかり見据える必要があると思います。現在IFRSが世界でどの程度普及しているのか、巨大ファンドはIFRSの普及を本当に待ち望んでいるのか、IFRSが生れた事情・背景等を事実に基づいて分析した資料、IFRSでないとどういう不都合が生ずるのか具体的に解明した資料はないものでしょうか(真剣に探してはおりません)。。今のところIFRS推進団体の会計雑誌しか読んでいないので情報として大いに偏っていることを反省しています。

現在IFRSはほぼ固まってしまった項目も相当ありますが、各国のさまざまな事情を反映すべく基準の見直しをしている最中とのことです。見直しについては基本的に大原則のみを定め、運用に関しては各国事情を反映すべく各国の事情に応じて柔軟にということのようですが、それでは金看板でもある「財務諸表の国際比較可能性の確保」は不可能となってしまいます。私には大きな自己矛盾としか思えません。そして、最近ようやくIFRSのもつ欠点や限界を取り上げた論文等が会計雑誌にぽつぽつ掲載されるようになりました。いい傾向ではないでしょうか。

米国が、自国の会計基準であるFASBを放棄してIFRSを全面採用するのか、それとも両者の歩み寄りになるのか注目されています。あの米国がFASBを放棄するとは思えませんが、仮に放棄したとしても日本は日本基準の調整で問題ないというのが個人的な意見です。全面採用となるのか日本基準の調整で済むのか、いずれにしても、IFRS見直し作業に関わっておられる偉い先生方にはわが国の立場はしっかり主張していただき、大きな禍根を残さないように頑張って欲しいと思います。欧米のものというだけで「ハハーッ」とかしこまって無批判に受け入れてしまう日本人の悲しい性は、いい加減に叩き直したいものです。

温室効果ガス排出規制の京都議定書に見られるように、わが国はいつも国際舞台では押し切られています。とどまる理由が全くなくなっても脱退も出来ないでズルズル不利益に耐え続けるあきれた国です。他の国はキッチリと例外を認めさせ、超真面目な日本のみが国情に合わない不利な基準を丸呑みさせられて馬鹿正直に遵守させられるということのないように願いたいものです。IFRS改訂作業にわが国からも参画している以上、後から文句は言えないということをよくよく念頭において交渉にあたってもらいたいと思います。


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